歳時記

メニュー 2011年10月11月 8月9月 6月7月 4月5月 2月3月 2010年12月2011年1月
2010年10月11月 8月9月 6月7月 4月5月 2月3月 2009年12月2010年1月 2009年へ
遠くを見つめ何思う
バッタの深い憂鬱


 晩秋の早い陽が山の端に落ち始めるころ、階段うえの小草原東端で、バッタが一頭、高く伸びたススキの穂につかまり、静止していた。ヒトの背丈よりも高いそこからは眼下に西町の家並みが拡がり、千中も一望できる。天敵の鳥の眼差しを顧みずそこまで昇ったのは、よほどの強い決意がいっただろう。拠り所とする草むらを離れて、ここで何を見つめ、何を思っていたのだろう。夕闇に沈む影は深い憂愁に包まれているようだった。

    10  月    


    11  月    

押し合いへし合い
葉裏で孵化のカメムシ幼虫たち


 御神輿かついでお祭り騒ぎ? 一見奇妙で、よく見ると面白い光景だ。後ろ足で懸命に踏ん張りながら、みなで白いかめ状のものを、輪の中へ中へと押し集めているように見える。上に乗った7頭が、ワッショイ!と盛んにその音頭をとっているかのようだ。これはササの葉裏で今し方孵化したばかりの、クサギカメムシの幼虫たち。白く見えるのは抜け出たばかりの卵殻で、上部の縁にフタの切れ目が黒く線となり写っている。それにしても、一体何をしているのだろう?9/11日の「森の手入れ」時、切ったネザサの束から偶然に見つかった。(写真と種の同定は、会員の土田泰子さん)

    8  月    


    9  月    

ふわふわ ひらひら
蝶のように舞い遊ぶ チョウトンボ


 7月10日森の手入れの時に、集合場所のミヤコグサの草原北西角のハンノキの梢の上空でチョウトンボが十数頭飛んでいるのが見えました。そう言えば毎年この時期、ハンノキの上を群れ飛ぶチョウトンボが見られます。すぐ裏にある冷谷池で発生しているのでしょう。チョウトンボがひらひら飛ぶ姿はちょっと夢の様でとても癒されました。
 チョウトンボの翅は、基部は黒く先端が透明です。なので実際の長さよりも短く見え、飛び方も普通のトンボのようにまっすぐ速くなくて、ふわふわひらひらと飛ぶため蝶のように見えるトンボです。また翅の先端の模様は個体によって微妙に違うので、個体識別できますよ。    (写真と文 土田泰子)
    6  月    


    7  月    

ナナホシテントウ?
実は山で初見の クロボシツツハムシ です


 4月28日、ミヤコグサの草原でいつもの様に何か虫がいないかなっと探していると、赤い地肌に黒い点々「ナナホシテントウ」かなと思ったが、よく見るとどうも違うぞ!なんだか顔の色も違うし体が筒状!そうだ!ツツハムシだ。ちょっと嬉しくなった。
 ツツハムシはからだが筒のような形のハムシの仲間で、クロボシツツハムシは、赤地に黒い点々があり、クヌギやサクラ、ハンノキなどの葉を食べる。
    4  月    


    5  月    

雪の尾根に小動物の足跡続く

 この度の未曾有の大地震と大津波により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、追い打ちをかける原発事故に苦しんでおられる方々に、心よりお見舞い申し上げます。
 島熊山に雪の積もった夕方遅く、山に入った。空は厚い雲に覆われ日はとっくに暮れていたのに、雪明かりで辺りは薄明るく、特養東の階段を登ると一足先にはや動物の足跡が印されていた。それはトントン進んだかと思えば脇にそれてウロウロ寄り道をしたり、上の平地では長距離を往復し、枯れススキの根元に縄張り主張の放尿も忘れていなかった。夜中ではなく早い時刻からの行動は、雪で食べ物探しに困るからだったのだろうか。足跡は尾根径へ点々と続き、やがて暗がりへ消えていた。

    2  月    


    3  月    

山からのお年玉
ルリビタキ♀ 目の前に現われ しばし遊ぶ


 今年初めての清掃ハイキングとモニ1000調査の終わりに山が贈ってくれたのは、1羽の愛らしいルリビタキ♀だった。いつもの作業報告を終え、団欒する参加者13人の傍らに現れるや、周りを取り囲むように足下近くをチョコチョコと飛び回り始めた。すぐ目の前、足下わずか2-3mの距離なのだ。ヒトを恐れる様子はない。それどころか、何か一言、言いたげでさえあった。小さな体を包む黄や淡いオリーブ色の羽毛を丸々と膨らませて、木製ベンチに乗り、枯葉積む大地に降り立ち、またハンノキの根幹に張りつきながら、転がるように周りをぐるり、およそ2巡はしただろうか。あちこちから思わず「エーッ!何でぇ?」「わあ、可愛い!」「目がクリンとしてる」など、驚きと感嘆の声が飛び交う。この間、ゆうに5分はあった。今までルビタキがこんなに長時間、こんな間近で遊んでくれたのは初めてのことだった。これはきっと、新年初仕事を祝う山からのお年玉だったのだろう。(写真は土田明さん)。
    12 月    


    2011年 1  月    

クヌギの枝に虫こぶ発見!
 自然の不思議を垣間見る


 11月2日、少路小学校の島熊山観察の下見に島熊山の一人で歩いた。マンションの切れ目の見晴らしがきく小広場、栗の木がある丁度その向かいに、クヌギの木があった。ふと見ると、そこにどんぐりの殻斗に似た実のような物がついていた。これって虫こぶ図鑑に出ていた虫こぶだ!名前は覚えていないけれど、クヌギの虫こぶを調べればすぐに分かる。
 図鑑によると「クヌギエダイガフシ」で、虫こぶ形成者は「クヌギエダイガタマバチ」と分った。
 虫こぶとは、昆虫が植物の組織内に卵を産み、その時に出す化学物質により、植物の組織が異常に増殖して、特有な形になった膨らみで、卵から孵った幼虫は、その内部の組織を食べて育ち、やがてこぶを食い破って外に出ていく。虫こぶを作る昆虫は、アブラムシやタマバチ、タマバエが多い。虫こぶを作る昆虫(形成者)は、宿主(虫こぶを作る植物)や場所(枝、葉、芽等)が決まっていて、虫こぶの名は、植物名とできる場所、形を組み合わせた名が付く。その形や色は花の様であったり、実の様であったり、実に多様で、ビックリするほど美しい物もある。宿主である植物は、妙なものを作らされて、迷惑至極な気がするが、虫こぶができた事で枯れたり弱ったりするような事はない。いったいどうしてこのような不思議な形になるのか、また虫こぶ形成者と宿主植物の不思議な関係に思いをめぐらせると興味がつきない。

    10 月    


    11 月    

鮮やかな色合いに目を見張る
マイコアカネそっと顔見せ


◆ミヤコグサの小草原出入口に、業者の草刈りから取り残された一角がある。8月30日の刈り込み前、深い草を踏み分けるたびに慌てて飛び出したショウリョウバッタやコバネイナゴ、ウスイロササキリたちの無数とも思われた姿も、草刈り後はほとんど死に絶えてしまい、飛翔力に勝るショウリョウバッタの雄のみが、わずかに残されたこの一角にかろうじて集まっていた。艶やかな色合いの赤トンボは、夕刻、その一隅にぽつねんと羽を休めていた。
◆まず、真っ赤に燃え立つ尾の余りの鮮やかさに、思わず息をのんだ。微かに黒を溶かし込んだショウジョウトンボの赤でもない、ナツアカネの朱を混ぜ合わせた赤でもない。”真の赤色”とは、多分これを指すのだろうと思われた。薄水色の顔に気づいた時は、その妖しさに心が騒いだ。あたかもそっと薄化粧を施した乙女のようだった。漆黒に塗り分けられた背と、その表面を頭部へ収束するかのように走る2本の黄の帯が、さらに彩りを添えていた。
◆帰宅後、図鑑で調べると、胸側部のK条紋から「マイコアカネ」とわかる。色合いが祇園の舞妓さんを彷彿とさせることからの命名というが、まさに言い得て妙である。
    8 月    


    9 月    

右巻き左巻きも 似た割合で顔見世
ネジバナの咲き方に見る自然の妙


◆左のネジバナの小花のつきかたは「右巻き」だろうか「左巻き」だろうか?モニ1000植物調査の最中、ひと時の話題となった。このまま右手で花茎を軽く自然に握ると、左斜め上に走るらせんの傾きと右親指とが平行になる。この時、このらせんは「右巻き」と呼ばれる。一方、左手で握った場合は親指とらせんとが直角に交錯してしまうので、「左巻き」とは呼べないことがわかる。
◆今から15年前の7月、南小草原のあちこちに多くのネジバナがキリリと起ち上がっていたころ、巻き方に右と左とでどちらが多いか数えたことがあった。10m4方ほどの中に咲いた57株中、「右巻き」が23株、「左巻き」が32株と、やや左優勢が見られたものの、とりわけどちらかに偏ってしまうことはなく、大自然の造り成す妙にしばし感嘆させられたものだった。細胞分化のどの段階で何を起因に巻き方が決まるのか、改めて興味深いところだ。

←小花は根元から先端へ、らせんを描いて順に咲き昇る。巻き方の判定は上から見て行う。


    6 月    


   7 月    

オオルリ♂がすがた見せ



◆「青い鳥!」と、林縁を見ながら東(あずま)さんが小声を発した。月一回おこなう島熊山一帯の清掃を終え、林縁に敷いたシートの上や周りで皆がくつろいでいる時だった。「青い鳥?もしかすると…」と、双眼鏡を取り出しながらも素早く東さんの眼を追う。すぐにはつかまらない。木々の葉が茂る頃の野鳥観察は数秒が勝負だ。遅れると、葉や小枝にさえぎられて見逃してしまう。気ばかりが焦るのを押さえてやっと視野に捕らえ、双眼鏡をのぞく。鮮やかな青い背がまぶしい。純白に輝く腹部、その上にくっきりと対をなす漆黒ののどと顔。オオルリ♂だった。
◆そういえば会員の土田泰子さんが4日前にこの林縁を散策中、それらしい「えも言われぬ声」を聞いていた。今は渡り途上の顔見せで、林縁に育つハンノキの幼木上にわざわざ姿を見せてくれたのか。だが、移動後向こう向きにとめた体を右にひねってこちらを見つめた視線には、自然の中で一人生きてゆかねばならぬ厳しさが強い覚悟となり現れているようだった。

    4 月    


新たなヒサカキの両性株発見



 山に早い春の訪れを告げるヒサカキ。元来雌雄異株であるヒサカキに両性花をつける特異株が育っているのを見つけたのは10年以上前のことだった。以来その株の盛衰を見守ってきたが、ここ2−3年は咲く花も数えられるほどに樹勢が衰え、行く末が心配されていた。そんな折の3月13日、別の場所で2株、新たな両性花が見つかった。しかもうちの1株は背丈大きく多数の花をつけ、両性花のほかに雌花まで混在するという珍しさだった。一体ヒサカキにとって両性花とは何なのだろう。偶然による交配雑種に過ぎないのか、それとも進化の系譜に沿えば先祖返りに当たるのだろうか。


  2  月   


  3  月   

タヌキの棲み続けられる山をめざして
竹間伐の向こうに見えるものは


 「島熊山はノアの方舟…そこに暮らす多くの生き物が共存できる未来を作っていこう」との呼びかけで始まった竹林の間伐、雑木林再生への道のりは、1999年1月以来ちょうど10年が過ぎ、今年11年目に入った。この間、実に多くの人たちが共生の未来を切り開こうと、無償の汗を流してきた。それは偉大な陽の力に包まれて、伐採跡に足の踏み場に困るほど多くの実生をはぐくむこととなった。だがいま、伸び始めた実生たちは一体どこに向かおうとしているのだろう?虫や鳥、小さな獣たちは前より暮らしやすくなっただろうか?仲間の数が増え、見たこともない他者はやってきたのだろうか?ヒトが自然の織り成す連鎖の網を紡ぐことはできないにしても、せめてささやかな一助にはなりたいものだ。それができるのが、多分、今なのではないか。島熊山を巡る連鎖の頂点に立つタヌキが、いつも、いつまでも安心して棲み続けられる山を目指して、この1年を歩んでいきたい。


  12  月   


  2010年 1  月   

inserted by FC2 system