遠くを見つめ何思う
バッタの深い憂鬱
晩秋の早い陽が山の端に落ち始めるころ、階段うえの小草原東端で、バッタが一頭、高く伸びたススキの穂につかまり、静止していた。ヒトの背丈よりも高いそこからは眼下に西町の家並みが拡がり、千中も一望できる。天敵の鳥の眼差しを顧みずそこまで昇ったのは、よほどの強い決意がいっただろう。拠り所とする草むらを離れて、ここで何を見つめ、何を思っていたのだろう。夕闇に沈む影は深い憂愁に包まれているようだった。
10 月
- 16日▼雑木林再生地内、西ため池跡に立つヤマガキの実、朱に色づく。幹には上方までタヌキの昇った跡々。
▼登口横でナワシログミ開花。甘い香、一帯に流れる。
▼南小草原を踏み分け歩くと、伸びた草間からイヌコウジュの芳香、そこはかとなく立ち昇る。
▼陽当たり良いアカメガシワの葉上で、ルリタテハ、羽をゆっくり閉じたり開いたり。一時の休息。
▼アカギカメムシの四―五例幼虫五〇頭ばかり、四枚の葉裏に分かれ、折り重なって集まっている。
▼見上げれば、諸処にミツバアケビの実、熟れている。割れた実は鳥がしっかり食べており、中は空。
- 31日▼ミヤコグサの小草原を歩けば、ササキリ、ツユムシ、コバネイナゴが、行く先々で追われ飛び跳ねる。
▼薄暗い林縁で、クロコノマチョウ足元から飛び出す。
▼尾根筋のあちこちで、コウヤボウキ咲いている。
▼トキリマメ、サヤ紅く色づき、種子黒光りして顔出し。>
11 月
- 3日▼東斜面で、マツムシ日中も鳴いている。
▼丈低いネザサの茎に、オオカマキリ逆立ちで産卵のただ中。尾部から出す泡状の卵嚢はまだ白く柔らか。
▼夕刻、階段上小草原の東端、千中や吹田が一望できる丈高いススキの穂につかまり、バッタSP一頭、超然として静止。遠くを見つめ、何を思っているのだろうか。
▼コナラの葉上で、セグロアシナガバチの女王?触角震わせつつ尾部をひたすら左右に振り続ける。不思議な動作。
- 4日▼夕刻、ワキグロサツマノミダマシ網を張り、捕虫の準備。
- 10日▼南小草原外れのジョロウグモの網上に、銀に輝く極微小のクモ二〇数頭が同居。極微の羽虫が網に かかると近くのものがゆっくり近づき捕獲するも、主は無関心。調べるとシロカネイソウロウグモと適切な銘々あり。
▼林縁で、ジョウビタキ♂初認。林内ではチッ、チッとアオジの声も聞こえて、冬鳥飛来している。
▼ホコリタケ坊主頭のぞかせている。白っぽい幼菌から、茶変し頂部が裂けて胞子を飛ばしているものまで様々。
- 20日▼ヒイラギの花、透き通るように白く咲いている。
▼ハマヒサカキ全開。特有の香、風に乗り流れ漂う。
押し合いへし合い
葉裏で孵化のカメムシ幼虫たち
御神輿かついでお祭り騒ぎ? 一見奇妙で、よく見ると面白い光景だ。後ろ足で懸命に踏ん張りながら、みなで白いかめ状のものを、輪の中へ中へと押し集めているように見える。上に乗った7頭が、ワッショイ!と盛んにその音頭をとっているかのようだ。これはササの葉裏で今し方孵化したばかりの、クサギカメムシの幼虫たち。白く見えるのは抜け出たばかりの卵殻で、上部の縁にフタの切れ目が黒く線となり写っている。それにしても、一体何をしているのだろう?9/11日の「森の手入れ」時、切ったネザサの束から偶然に見つかった。(写真と種の同定は、会員の土田泰子さん)
8 月
- 10日▼林中からツクツクボウシの声聞こえる。今年初めて。
- 18日▼ススキの葉にショウリョウバッタモドキ静止。ヒトの気配察すると三歩四歩と後ずさりし、隙を見てサッと葉裏に回り込む。それでも隠れたつもり。
▼夜、東斜面横でマツムシ数頭の声聞こえる。今年初。
- 25日▼闇を裂き、ヤマナラシの樹上から突然セミのギャーギャーという恐怖の叫び声する。30秒も続くが、やがて途切れ途切れとなり、終には途絶える。
9 月
- 5日▼夜、階段横東斜面でエンマコオロギ、ツヅレサセコオロギ鳴いている。今年初めて。マツムシは盛期へ。
- 11日▼ミヤコグサ小草原に、ウスバキトンボ五ー六頭、朝の陽に輝きながら低空をゆったりと周回飛翔。
▼小草原出入口にヤハズソウ、アキノノゲシ咲いている。林縁木陰にはコナスビ、イノコズチも咲いている。
▼たわわに咲いたヌルデ♀花の花房に、どこにいたのかコアオハナムグリ多数が押し寄せ、吸蜜に余念ない。
▼登口階段を、アゲハ一頭、急ぎ駆け昇り行く。
▼神戸層群への小径に、ハイイロチョッキリの落とした小枝つきドングリ、まだ青いままに多数が散乱。
▼クズの花、あちこちで小豆色に咲いている。
▼南小草原林縁にススキ咲いている。明日は中秋の名月。
▼白く粉をふいて、アオツヅラフジ濃青色に熟れている。
▼ネザサの葉裏に、孵化したてのクサギカメムシ一令幼虫十数頭が、脱出した殻の周りで円陣を組み、中心に向かって押し合いへし合い。輪に入れず取り残された個体もあり。
▼小径のアカメガシワの葉に、アカギカメムシ一頭、背は朱の地に黄と黒の斑紋、脚や触覚、腹腔を金緑に輝かせつつ、華麗に登場。山で初めて見る(東)。
▼メドハギ、マルバハギ、諸所に咲いている。
▼夕刻、ルリタテハ一頭が草の茎に静止。今年初認。
- 18日▼タンキリマメ咲いている。黄の小花が可憐。
▼丈高いカクレミノの枝先に、小果多数が集まり球状をなす果実、幾房も実っている。まだ青い(谷)。
▼アレチヌスビトハギ、桃紅色に咲いている(柴田)。
▼林縁の木陰を、モンキアゲハ悠々と飛び去る(土井)。
ふわふわ ひらひら
蝶のように舞い遊ぶ チョウトンボ
7月10日森の手入れの時に、集合場所のミヤコグサの草原北西角のハンノキの梢の上空でチョウトンボが十数頭飛んでいるのが見えました。そう言えば毎年この時期、ハンノキの上を群れ飛ぶチョウトンボが見られます。すぐ裏にある冷谷池で発生しているのでしょう。チョウトンボがひらひら飛ぶ姿はちょっと夢の様でとても癒されました。
チョウトンボの翅は、基部は黒く先端が透明です。なので実際の長さよりも短く見え、飛び方も普通のトンボのようにまっすぐ速くなくて、ふわふわひらひらと飛ぶため蝶のように見えるトンボです。また翅の先端の模様は個体によって微妙に違うので、個体識別できますよ。 (写真と文 土田泰子)
6 月
- 12日▼ウグイスの澄んだ声、樹間から流れくる(河原)。
▼実生茂る雑木林再生地内を、アオスジアゲハ、軽やかに飛び交う。青緑の紋が見え隠れしてきれい(塚)。
▼センダンの花咲いている。もう終わり頃(井坂)。
▼アカメガシワの葉上に、ナナフシ幼生一頭が静止。
- 19日▼尾根東裾に、コマツナギ桃紅色に咲いている。
▼ホタルガ一頭、木陰を低くハタハタと横切り行く。羽ばたきのたび、白い紋がひらめいて印象的。
▼ミヤコグサ小草原に、ネジバナ二株、キリリと突き出ている。明るい桃色の花弁が緑の草間に鮮やか(土井)
▼林縁にヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴの真っ赤な実艶やか。
▼赤紫と薄桃色の花つけて、ノアザミ点々と咲いている。
▼林内で、アカメガシワ、ナンテンの花咲き始め。林床ではヤブコウジ、小さなつぼみふくらんでいる。
▼雨上がりの林床、朽ち葉の上に、オオミスジコウガイビル二頭、黄土色の長い体うねらせてじっと静止。
7 月
- 3日▼ブンブーンと大きな羽音たて、ジガバチ、林床に巣 穴掘削の場所探し?鮮やかな腰の朱がよく目立つ。
▼風通る獣道のあちこちに、サツマノミダマシ網張って小虫の掛かるを待っている。近くではオナガグモ、小枝間に張る網に卵嚢をつけ、そばに寄り添ってい る。
▼諸所にシャシャンボ咲き始め。小さな釣鐘状の花、小枝一杯に吊り下がり、夏の陽に白く輝いている。新鮮。
▼リョウブ咲き始め。勢いよく横や上斜めに伸びた房状花穂の付け根から、一輪二輪と順に開きだしてい る。
▼小草原林縁の木陰を、ヒカゲチョウ二頭三頭がジグザグの鋭い軌跡残して、急ぎ駆け抜けて行く。
- 10日▼林内からチィーと、ニイニイゼミの高くかすれた声。
▼ギース、チョンと、キリギリスけだるく初鳴き。
▼エナガ七ー八羽の小群、林縁のハンノキでしばし戯れ。
▼林縁に車座で歓談するヒトの輪の中を、コシアキトンボ一頭、悠然と飛び回る。縄張りの主張と巡回か。
- 19日▼アカメガシワの実、大きくなる。イガグリ状の小球果が集まって房となり、各小枝に林立している(谷)
- 25日▼豊島前道路で今年生まれの子ダヌキはねられて死ぬ(東)。
ナナホシテントウ?
実は山で初見の クロボシツツハムシ です
4月28日、ミヤコグサの草原でいつもの様に何か虫がいないかなっと探していると、赤い地肌に黒い点々「ナナホシテントウ」かなと思ったが、よく見るとどうも違うぞ!なんだか顔の色も違うし体が筒状!そうだ!ツツハムシだ。ちょっと嬉しくなった。
ツツハムシはからだが筒のような形のハムシの仲間で、クロボシツツハムシは、赤地に黒い点々があり、クヌギやサクラ、ハンノキなどの葉を食べる。
4 月
- 1日
▼尾根筋南の裸地で、越冬から目覚めのアカタテハ初認。陽溜まりの中、はや縄張り張っている。神戸層群上では、羽化後間もない新鮮アゲハチョウも初認。
- 5日
▼山中の諸所に、コバノミツバツツジ咲き始め。東斜面ではツクシもあちこちで顔出しし、春は盛りへ。
- 6日
▼尾根筋南の裸地で、これも越冬から目覚めのヒオドシチョウ二頭を初認。個々に縄張りを張り、互いを牽制している。他種の進入も許さず激しく追い払う。
▼神戸層群上の尾根に、カンサイタンポポ咲き始め。
▼ミヤコグサの小草原では、ツバメシジミ♂、♀初認。
- 7日
▼林中の諸所に、アオキ開花始まる。昨年の残り実の中には、上半分は真っ赤、下半分は緑とくっきり塗り分けられたもの多い。冬の陽射しの影響?
▼強風の中、コココンとリズム良く、コゲラ樹幹つついて食べ物探し。それでもなかなか見つからず。
▼小草原にオヘビイチゴ一輪、隠れる如くに咲いている。
- 13日
▼タンポポの花の上、モモブトカミキリモドキでんと居座り、せっせと花粉食べている。黒い体がよく目立つ。
▼観察路上に、ボトンボトンと落下したヤブツバキの大振りの花が多数。薄暗い中に赤や桃色が艶やか。
- 17日
▼サルトリイバラ♂花、♀花開く。薄黄緑の花弁は半透明で、涼しげ。
▼西ため池跡そばの大きなモチノキ、花開く。
▼ミツバアケビ咲き始め。小草原出入口付近ではキュウリグサ、ヤエムグラ、タチイヌノフグリ、オニタビラ コ他の草たちももとりどりに咲き始め、春たけなわの感。
▼越冬から目覚め、エサキモンキツノカメムシ厳かに登場。背に負うハートの御紋がいつも刺激的。
▼山で最も早く花咲くコナラの新葉に、ヒメクロオトシブミはや来ている。揺りかごづくりの準備。
- 25日
▼登り口階段東奥の林中に、大きなアオダモ一株、新たに見つかる。白い房状の花がボッボボッと樹冠に起ち上がり、辺りを淡く霞ませているよう。
▼林床ではフジの花が咲き始め。五〇p近い花房の上から三分の一ほどが開いており、下はまだツボミ。
▼数日来の雨で地面が柔らかくなったからか、コニワハンミョウの新しい巣穴、一気に増えている。直径一o〜四oぐらいまで、各自の体に合わせて測ったように正円を開けている。まさに職人技。
- 28日
▼ミヤコグサの小草原に、ニガナ黄に咲いている。林縁ではヒメコウゾが一斉に咲き始め。
▼小草原西の尾根に、新葉の縁赤く染めてカマツカ咲き始め。小球のつぼみが突然パチッと開いた様は、人の驚いて思わず目を見開いたときのよう。
▼奥の尾根に、ヤマツツジ朱に咲いている。久し振り。
▼クロボシツツハムシ初見。ナナホシテントウと思いきや、近づき見れば別種。この山で初めて見る。
▼ツマキチョウ♀に出会う。毎年この時期だけに現れる春の使者。神戸層群上の尾根では、新鮮キアゲハ初認。羽化して間のない個体か、ネザサ葉上で羽広げて休息。
▼風に乗り、ヤマナラシの綿毛流れる。淡い雪のよう。
5 月
- 4日▼尾根沿いの丈低いコナラの新葉巻き、チョッキリ(SP)「し」の字に仕上げた巣、ぶら下げている。三個あり。
▼セダカコガシラアブ、背が盛り上がり、体が九〇度前屈した窮屈な姿勢で、カマツカの花や葉の上で休息。
▼今年初めて、オトシブミの”揺りかご”見る。近くの葉上には成虫が静止し、次の作業に備えている。
▼ウグイスの声澄み渡る。例年より随分遅く今年初聞き。
▼コニワハンミョウ幼虫、強力な大あごで大きなクロヤマアリ(SP)の胸部を挟みつけ、巣穴に引きずり込む。
- 9日▼夜、階段上平地で、ジージージーと今年初めて虫の声。
- 13日▼腐葉重なる湿った谷筋に、ギンリョウソウ、小群で咲いて いる。全身を包む淡い光が反射して青銀に輝き、幻想的。
▼ナツハゼ、諸所に咲いている。光沢を持つ球状の肉厚の花弁は、時にリンゴのよう、また作り物のよう。
▼小径沿いにヤマウルシ開花。傘状に展開する大きな葉の下では、蜜と花粉を求める虫たちがひっきりなし。
- 14日▼ミヤコグサ小草原出入口で、シオカラトンボ若♂初認。
- 15日▼雑木林再生地で、ヤマグワの実大きくなり薄く色づく。
- 19日▼スイカズラ、まさに咲き始め。花弁白銀に光っている。
雪の尾根に小動物の足跡続く
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この度の未曾有の大地震と大津波により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、追い打ちをかける原発事故に苦しんでおられる方々に、心よりお見舞い申し上げます。 |
島熊山に雪の積もった夕方遅く、山に入った。空は厚い雲に覆われ日はとっくに暮れていたのに、雪明かりで辺りは薄明るく、特養東の階段を登ると一足先にはや動物の足跡が印されていた。それはトントン進んだかと思えば脇にそれてウロウロ寄り道をしたり、上の平地では長距離を往復し、枯れススキの根元に縄張り主張の放尿も忘れていなかった。夜中ではなく早い時刻からの行動は、雪で食べ物探しに困るからだったのだろうか。足跡は尾根径へ点々と続き、やがて暗がりへ消えていた。 |
2 月
- 14日▼島熊山に雪積もる。小動物の動いた痕跡点々。
- 20日▼ハンノキの雄花開き、花粉の飛散始まる。
3 月
- 5日▼南小草原林縁に、ヒカンザクラ緋も鮮やかに咲いている。島熊山では初めて見る。
▼肌寒いが陽射しそそぐ枯葉の上、眠りから覚めたキタテハ一頭、身を縮めつつ日光浴。今年初認。
- 12日▼階段東のヤマナラシ、芽隣割れ新芽顔出し。
- 13日▼手入れ進む竹林跡にも春の訪れ。ヒサカキ、開花始まり、特有の香、そこはかとなく漂う。林床ではテングチョウが目覚めの日光浴。ムラサキシジミは作 業のヒトに驚き飛び立つ。羽表の紫が光り鮮やか。
▼ヤマナラシの花穂伸び、開花(柴田)。
▼シュンラン、薄い絹衣に包まれたつぼみつけている(田村)
- 19日▼コナラの倒木の裏に、大きなカタツムリ骨休め。積もる落ち葉の底には、ダンゴムシ丸まりまどろんで いる。
▼咲き始めたヒサカキの花でミツバチが蜜集め。両後足はヒサカキの白い花粉でぷっくり膨らんでいる。
▼フサアカシア開花。淡い黄の花が房となり柔らか。
▼コウヤボウキの冬芽割れ、和毛に包まれた新葉顔見せ。極細の幹に列成す様は、薄黄緑の花が咲いたよう。
▼崖下の落ち葉掻き分けると、下には発芽できなかったドングリ、幾つも濡れて光っている。その 下層には蜘蛛の巣が棚状に張りめぐらされ、王国を作っている。
▼窪みに集まったシャリンバイの種から極細の幹スックと立ち上がり、双葉開いている。その数一六本。
▼東ため池跡土手に、四本に株立ちした大きなシャシャンボ見つかる。地上五〇pで直径1mを超す。
- 20日▼バス道路際のフェンス内側に、ヤブツバキ花盛り。紅赤の花弁に黄色のヤクが鮮やか。豊寿荘寄りでは白い釣鐘状花びっしりとつけ、アセビが咲き始め。
- 23日▼階段東側斜面で、レンギョウ咲き始め。
▼刈り込まれた緑地に、ホトケノザ、ヒョイと起ち上がり、桃紅色の小花つけている。周りにはオオイヌノフグリ、青い小石をばらまいた如くに点々と咲いている。
※歳時記について、編集班収集のものは全てを無記名とします。
山からのお年玉
ルリビタキ♀ 目の前に現われ しばし遊ぶ
今年初めての清掃ハイキングとモニ1000調査の終わりに山が贈ってくれたのは、1羽の愛らしいルリビタキ♀だった。いつもの作業報告を終え、団欒する参加者13人の傍らに現れるや、周りを取り囲むように足下近くをチョコチョコと飛び回り始めた。すぐ目の前、足下わずか2-3mの距離なのだ。ヒトを恐れる様子はない。それどころか、何か一言、言いたげでさえあった。小さな体を包む黄や淡いオリーブ色の羽毛を丸々と膨らませて、木製ベンチに乗り、枯葉積む大地に降り立ち、またハンノキの根幹に張りつきながら、転がるように周りをぐるり、およそ2巡はしただろうか。あちこちから思わず「エーッ!何でぇ?」「わあ、可愛い!」「目がクリンとしてる」など、驚きと感嘆の声が飛び交う。この間、ゆうに5分はあった。今までルビタキがこんなに長時間、こんな間近で遊んでくれたのは初めてのことだった。これはきっと、新年初仕事を祝う山からのお年玉だったのだろう。(写真は土田明さん)。
12 月
- 11日▼少年文化館奥の小径沿いに、タカサゴユリ一輪、季 節外れに咲いている。谷筋では、コシアブラの葉、白く半透明に澄み、林床に幾つも散り重なっている。
▼古池沿いの小径で、ジョウビタキ♀に出会う。尾を震わせ、カカッ、カカッと乾いた声で鳴いている。翼の白い紋付きが明瞭。そばにアオジも見る。
- 12日▼オープンランド、ササ群落の根元に、フユノハナワラビ一〇数株見つかる。うち一株は火炎の如くに花軸立ちあげて、つぼみを多数つけている(谷)。
▼山の黄紅葉一気に深まる。風が渡ると、青空を背に木の葉ハラハラと舞い落ちて、夢のよう。
2011年 1 月
- 2日▼キツネの巣穴横で鳥の羽が散乱、食べられた痕あり。帰宅後「羽根図鑑」で調べると、ツグミのよう。
- 5日▼山を散策中、ヒレンジャク二〇羽の群れに出会う。既にトウネズミモチなどを採餌の後か、大きな枯れマツの小枝にとまり休息の後、飛び去る(土田泰)。
- 6日▼神戸層群上のマツで、メジロ7―8羽が木の周りを何度もフライング飛翔。羽虫を捕食の行動か。
- 7日▼神戸層群上の大きなトウネズミモチの木に、ヒヨドリ一〇数羽が群れて採餌。声騒然とし、賑やか。
- 9日▼少年文化館下でロウバイ咲き始め。淡い黄に染まる半透明の花弁が涼しげ。つぼみも未だ多し(土田泰)。
▼ビンズイ一〇羽、クロマツ林を歩きつつ採餌(土田泰)。
▼ツグミ三〇羽の群れ、カキの木や地面で採餌も、猛禽 一羽が上空に現れるや、突然一斉に飛び立つ(土田泰)。
▼尾根の林で、カラの混群中にヒガラ見る(土田泰)。
- 16日▼全球状にトゲ拡げ、コセンダングサの細長い果実、動物の通るをじっと待つ。針山に刺した針のよう。
▼ルリビタキ♂、モニ1000調査で歩く傍らを、付くや付かずで様子見。脇の黄、翼の青が印象的。
▼落下できなかったアベマキのドングリ、イガイガ帽子の中に収まったまま、寒風に身を委ねる。
▼林縁にルリビタキ♀現れ、眼前を飛び回る(上記)。
- 23日▼腐葉土製造所の構築中、モズ若♀、落ち葉かく足下から付いて離れず。むき出しの土から虫も補食(土田明)。
クヌギの枝に虫こぶ発見!
自然の不思議を垣間見る
11月2日、少路小学校の島熊山観察の下見に島熊山の一人で歩いた。マンションの切れ目の見晴らしがきく小広場、栗の木がある丁度その向かいに、クヌギの木があった。ふと見ると、そこにどんぐりの殻斗に似た実のような物がついていた。これって虫こぶ図鑑に出ていた虫こぶだ!名前は覚えていないけれど、クヌギの虫こぶを調べればすぐに分かる。
図鑑によると「クヌギエダイガフシ」で、虫こぶ形成者は「クヌギエダイガタマバチ」と分った。
虫こぶとは、昆虫が植物の組織内に卵を産み、その時に出す化学物質により、植物の組織が異常に増殖して、特有な形になった膨らみで、卵から孵った幼虫は、その内部の組織を食べて育ち、やがてこぶを食い破って外に出ていく。虫こぶを作る昆虫は、アブラムシやタマバチ、タマバエが多い。虫こぶを作る昆虫(形成者)は、宿主(虫こぶを作る植物)や場所(枝、葉、芽等)が決まっていて、虫こぶの名は、植物名とできる場所、形を組み合わせた名が付く。その形や色は花の様であったり、実の様であったり、実に多様で、ビックリするほど美しい物もある。宿主である植物は、妙なものを作らされて、迷惑至極な気がするが、虫こぶができた事で枯れたり弱ったりするような事はない。いったいどうしてこのような不思議な形になるのか、また虫こぶ形成者と宿主植物の不思議な関係に思いをめぐらせると興味がつきない。
10 月
- 10日▼尾根筋を歩くと、目の前二mにヤマガラ飛来し、ヒョイと柵の上にとまる。目が合うと慌てて飛び立つ。
▼ナツハゼの実黒熟。アオツヅラフジも粉をふいて熟す。
- 17日▼竹林跡で、ウメモドキの実赤く色づく。隣同士に育つヤマハゼ、ヤマウルシは青い実、仲良く実らせている。
▼登り口そばにナワシログミ咲き、甘い香、一帯に流れる。ホウジャク(SP)ホバリングして上手に吸蜜す。
▼実が色づき始めたピラカンサ数本の小枝先に各一輪だけ、大ぶりの花が季節外れに咲いている(土田泰)。
▼ハンノキに、はや来春の♀花伸びている。未だ蒼く堅い。
11 月
- 2日▼尾根筋のクリの木の向かいで、クヌギの小枝に虫こぶ発見。クヌギエダイガフシとわかる(土田泰)。
▼尾根奥に、アキノキリンソウ、ひっそりと咲き始め。あちこちで、コウヤボウキも咲いている(土田泰)。
▼ミヤコグサの小草原で、アキアカネ♂と♀見る。今年初認。久し振りのこと(土田泰)。
- 10日▼ジャージャーと鳴きながら、カケス山の西端を移動。
- 11日▼元小トンボ池横にタヌキの新しい糞あり。カキやシャシャンボの種混じっている。階段途中にもアケビの種混じる糞落ちている。車道を横断している模様。
- 14日▼再生の雑木林を歩く足下から、クロコノマチョウ突然飛び出す。林床に降りると枯葉と見分けつかず(河原)。
▼山中にヌルデ、ヤマハゼ、ヤマウルシの紅葉鮮やか。
▼尾根筋に、アキノキリンソウ新株見つかる(河原)。
▼サルトリイバラ、ナンテンの赤い実目立つ。林床にはヤブコウジ、マンリョウも赤く色づき輝いている。
▼尾根筋に、アオバトの食べられた痕あり。羽散乱。
- 17日▼ウラナミシジミ、萩の花で吸蜜。今年初認(土田泰)。
- 18日▼クロマダラソテツシジミ、セイタカアワダチソウで吸蜜。去年に続いて見る。温暖化の影響?(土田泰)。
- 21日▼西ため池跡のカキの木天辺近くに、残りガキ五―六個。幹にはタヌキの昇った爪痕、白く続く(横山)。
- 24日▼トンボ池で、マヒワ十数羽を見る(土田泰、横山)。
- 27日▼観察路中央付近に、キツネのものらしき糞あり。中に羽軸が白く層をなし、羽毛も糸状に混じっている。
鮮やかな色合いに目を見張る
マイコアカネそっと顔見せ
◆ミヤコグサの小草原出入口に、業者の草刈りから取り残された一角がある。8月30日の刈り込み前、深い草を踏み分けるたびに慌てて飛び出したショウリョウバッタやコバネイナゴ、ウスイロササキリたちの無数とも思われた姿も、草刈り後はほとんど死に絶えてしまい、飛翔力に勝るショウリョウバッタの雄のみが、わずかに残されたこの一角にかろうじて集まっていた。艶やかな色合いの赤トンボは、夕刻、その一隅にぽつねんと羽を休めていた。
◆まず、真っ赤に燃え立つ尾の余りの鮮やかさに、思わず息をのんだ。微かに黒を溶かし込んだショウジョウトンボの赤でもない、ナツアカネの朱を混ぜ合わせた赤でもない。”真の赤色”とは、多分これを指すのだろうと思われた。薄水色の顔に気づいた時は、その妖しさに心が騒いだ。あたかもそっと薄化粧を施した乙女のようだった。漆黒に塗り分けられた背と、その表面を頭部へ収束するかのように走る2本の黄の帯が、さらに彩りを添えていた。
◆帰宅後、図鑑で調べると、胸側部のK条紋から「マイコアカネ」とわかる。色合いが祇園の舞妓さんを彷彿とさせることからの命名というが、まさに言い得て妙である。
8 月
- 5日▼風に乗り、ヒグラシの乾いた声、遠く流れ着く。
- 8日▼白く輝いて、タカサゴユリ咲いている(谷、河原)。
- 20日▼夜、東斜面と南小草原でマツムシ何頭もが盛んに鳴いている。今年初聞き。みな随分と早口で、どの声も少し濁っており、盛期の澄んだ音色とは大違い。
- 21日▼ミヤコグサの小草原に踏み入ると、足下からバッタ類慌てて四散する。ショウリョウ♀は大きな体を持て余し気味に少しだけ飛び移り、一方小柄な♂はキチキチと叫びつつ一〇m以上を一気に飛び去って行く。ササキリはピョンと跳ねて前や横に飛び移り、驚いた顔で横目に様子うかがっている。
▼マツムシの声さらに増え、エンマコオロギも鳴き始め。
- 30日▼草刈りの後、小草原にバッタ類の姿消える。後日の草刈りでは南小草原のマツムシ、キリギリスも壊滅。
9 月
- 9日▼登り口階段で、オンブバッタ褐色♀と緑♂とが交尾。珍しい取り合わせ。別な場所ではショウリョウバッタの交尾も見る。いずれも初めて現認(土田泰)。
▼コカマキリ、ヤマナラシの主幹で静止(土田泰)。
- 12日▼極端に小さいキチョウ見る。栄養不足で羽化?(岸田)。
▼イチモンジセセリ、炎天のササ刈りで汗すごい会員さんの手にとまり、ワイシャツ袖口から手首まで、口吻伸ばして吸い続ける。とてもくすぐったそう。
▼山はツクツクボウシの大合唱。他のセミはもう聞かれず。
▼林中に、傘の径一九pの巨大マンネンタケ一本。
▼尾を鮮赤色に染め、顔は水色に薄化粧して、マイコアカネ、小草原に顔見せ。妖しいほどに鮮やか。
▼西溜池跡に、タヌキの新しい糞一つ。炎天に干涸らびつつあるも、アリ多数が出入りしており、直近のもののよう。緑や黒に光る甲虫の殻多数が混じる。
▼エナガ一〇数羽を先頭に、少し遅れてシジュウカラ、ヤマガラが混群をつくり、再生の雑木林を移動。
▼神戸層群上に、マルバハギ桃紅色に咲き始め。
- 15日▼小径に、ヒヨドリジョウゴ咲いている(土田泰)。
- 17日▼クスの葉上で、ゴマダラチョウ羽を広げて日光浴(土田泰)。
- 19日▼サルトリイバラ、センダンの実青く大きくなる(谷、米虫)
右巻き左巻きも 似た割合で顔見世
ネジバナの咲き方に見る自然の妙
◆左のネジバナの小花のつきかたは「右巻き」だろうか「左巻き」だろうか?モニ1000植物調査の最中、ひと時の話題となった。このまま右手で花茎を軽く自然に握ると、左斜め上に走るらせんの傾きと右親指とが平行になる。この時、このらせんは「右巻き」と呼ばれる。一方、左手で握った場合は親指とらせんとが直角に交錯してしまうので、「左巻き」とは呼べないことがわかる。
◆今から15年前の7月、南小草原のあちこちに多くのネジバナがキリリと起ち上がっていたころ、巻き方に右と左とでどちらが多いか数えたことがあった。10m4方ほどの中に咲いた57株中、「右巻き」が23株、「左巻き」が32株と、やや左優勢が見られたものの、とりわけどちらかに偏ってしまうことはなく、大自然の造り成す妙にしばし感嘆させられたものだった。細胞分化のどの段階で何を起因に巻き方が決まるのか、改めて興味深いところだ。
←小花は根元から先端へ、らせんを描いて順に咲き昇る。巻き方の判定は上から見て行う。
6 月
- 1日▼小草原林縁のセンダン開花。淡い紫の小花多数が房となり梢の先端に咲きこぼれ、甘い香一帯に流れる。
▼ウメモドキ咲き始め。ごく淡い桃色に染まるつぼみに混じり、半透明の小花一輪、慎ましく開いている。
▼風の走り抜けるまま、チガヤの銀穂、自在に揺れ動く。
- 5日▼キョッ、キョキョッと鳴きながら、ホトトギス一羽、 暗い夜空を急ぎ行く。どこで落ちつこうというのか。
- 20日▼クワの実、暗紅色に熟している。食べるとほのかに甘い。林縁ではコウゾも朱に色づき始め(土井)。
▼間伐地内斜面の大きなヤマモモの木に、朱や赤に色づいた果実びっしり実っている。結実は間伐後初め てのこと。一週間後には黒熟した果実無数に落下。
▼ヤマハゼ、ヤマウルシの実大きくなる。緑の表皮が 新鮮(土井)。アオキの実も大きくなる(米虫)。
▼山の南裾に、コマツナギ桃紅色に咲いている(山 口)。
▼アラカシの葉裏に、ムラサキシジミ産卵(土田泰)。
- 27日▼梅雨の合間の雨上がり、林縁には木の香、漂い流る。
▼今日も無事生きられて、ツマグロヒョウモン♂、ヒメジョオンの花につかまり、一日の深い眠りへ。
▼チョウトンボ三頭五頭、ハンノキの樹冠に沿いながら、悠々と群れ飛んでいる。今年初認(土田泰)。
- 30日▼クロアゲハ、クチナシの花を一輪ずつ丁寧に吸蜜。
▼リョウブまさに咲き始め。横に上に激しく燃え立つ円錐の花房のつけ根から、一輪二輪と開いている。
▼オオカマキリの薄茶型幼生、緑の草間に混じる枯れ草に手足伸ばしてつかまって、その一部になりすま
し。
7 月
- 7日▼ギリギリギリッと、キリギリスゆっくり鳴き始め。
- 18日▼コナラの幹にアブラゼミ静止。今年初見(土井)。
▼タマムシの死殻見つかる。梅雨明けすぐの透明な光浴び、金緑金赤に輝く。腹胸部とりわけ綺麗(丸 田)。
▼林縁の木陰、休憩場所で、大きなモンキアゲハ一頭、頭上をゆっくりと行き来する。縄張りの見回りか。
▼尾根径で、ルリタテハ休息。羽表の瑠璃色紋が印象的。
▼アオスジアゲハ、交尾のまま小枝に静止。前後翅を走る太い緑青の一文字紋様が、逆光に透けて鮮やか。
オオルリ♂がすがた見せ
◆「青い鳥!」と、林縁を見ながら東(あずま)さんが小声を発した。月一回おこなう島熊山一帯の清掃を終え、林縁に敷いたシートの上や周りで皆がくつろいでいる時だった。「青い鳥?もしかすると…」と、双眼鏡を取り出しながらも素早く東さんの眼を追う。すぐにはつかまらない。木々の葉が茂る頃の野鳥観察は数秒が勝負だ。遅れると、葉や小枝にさえぎられて見逃してしまう。気ばかりが焦るのを押さえてやっと視野に捕らえ、双眼鏡をのぞく。鮮やかな青い背がまぶしい。純白に輝く腹部、その上にくっきりと対をなす漆黒ののどと顔。オオルリ♂だった。
◆そういえば会員の土田泰子さんが4日前にこの林縁を散策中、それらしい「えも言われぬ声」を聞いていた。今は渡り途上の顔見せで、林縁に育つハンノキの幼木上にわざわざ姿を見せてくれたのか。だが、移動後向こう向きにとめた体を右にひねってこちらを見つめた視線には、自然の中で一人生きてゆかねばならぬ厳しさが強い覚悟となり現れているようだった。
4 月
- 4日▼キチョウ、越冬から本格的な目覚め。二頭が互いにそしらぬ顔で、林床近くをゆっくりと飛び交っている。
▼尾根筋そばの大きなヤマザクラ、一輪二輪と咲き始め。
▼アオジ二羽、ツッと鳴いてまだ居残っている(田村)。
- 8日▼暖かな日中、ツマキチョウなどチョウ六種が出現。ヒオドシチョウ二頭は別個に尾根筋で縄張り主張。アゲハが近寄ると、羽音をたてて激しく追い払う(土田
泰)。
▼尾根筋に、ザイフリボク清楚に咲いている(土田泰)。
- 10日▼小径に林縁に、カンサイタンポポあちこちで開花。
▼背高いコナラ、アベマキの梢はどれも冬芽割れ、噴き溢れる新葉で淡く霞んだよう。
- 14日▼尾根筋横の小径沿いで、コバノガマズミ咲き始め。
▼羽化したてのクロスジギンヤンマ、尾根筋のヒオドシに追い払われ、早々に縄張り外に避難(土田泰)。
▼オオルリかキビタキの「えも言われぬ声」(土田泰)。
- 18日▼ほど近く低いハンノキに「青い鳥」見つける(東)。
▼南小草原に、アリアケスミレ、一〇株一五株と小群落をなし咲いている。山で初めて見つかる(土田泰)。
- 19日▼尾根筋に、満開の大きなアオダモ見つかる。
▼ヒオドシ去った裸地に、はやアカタテハが進出。
▼あちこちで、カマツカ今まさに咲き始め。
- 25日▼新御堂筋そばの林中に、ヤマツツジ朱に満開。
▼セイタカアワダチソウやサンショウの若茎で、アワフキムシ、はや泡の噴き始め。ヒトのツバのよう。
▼山中に、シロハラの警戒声響く。まだ居残っている。
5 月
- 5日▼小草原林縁のハンノキに、ヒメクロオトシブミの揺りかご二つ三つ。近くのコナラでも葉を巻いている。
▼緑立つ小草原に、ツマグロヒョウモン初お目見え。
- 9日▼山にモチツツジ花盛り。甘い花の香漂い流れる(社)。
▼尾根筋を、モンキアゲハ一頭駆け抜けて行く(土田泰)。
▼ヤマウルシ咲き始め。房状の花に蜜と花粉求めて、ニホンミツバチやコアオハナムグリ、ついて離れず(岸田興)。
▼コナラの高い梢に、キビタキの澄んだ声響き渡る。
- 14日▼少年文化館奥で、ナツグミの実大きく膨らむ。
- 16日▼南小草原奥に、トウバナ、コナスビ咲いている(社)。
新たなヒサカキの両性株発見
山に早い春の訪れを告げるヒサカキ。元来雌雄異株であるヒサカキに両性花をつける特異株が育っているのを見つけたのは10年以上前のことだった。以来その株の盛衰を見守ってきたが、ここ2−3年は咲く花も数えられるほどに樹勢が衰え、行く末が心配されていた。そんな折の3月13日、別の場所で2株、新たな両性花が見つかった。しかもうちの1株は背丈大きく多数の花をつけ、両性花のほかに雌花まで混在するという珍しさだった。一体ヒサカキにとって両性花とは何なのだろう。偶然による交配雑種に過ぎないのか、それとも進化の系譜に沿えば先祖返りに当たるのだろうか。
2 月
- 8日▼早朝、ハイタカらしき一羽、上空を島熊山緑地から 新船場へ向け、不器用に羽ばたきながら飛び去る。
- 14日▼ルリビタキ♂、つかず離れずで作業の人間を観察。
- 28日▼夕刻、山裾から道にまで、ヒサカキの香、微かに漂 い流れる。二日後、尾根道で花咲くを見る(土田 泰)。
3 月
- 8日▼ルリシジミ初認。ネズミモチの小枝で、止まっては飛び立ちの繰り返し(土田泰)。
▼クロマツ林の北端で、ビンズイ四羽、無心に採餌(土田泰)
- 11日▼ホチョホチョと、ウグイス鳴き始め。まだ舌が回らない。
- 13日▼階段横で、ヤマナラシ♂花一房、ニョッと咲き始め。
▼階段上の小草原に、コニワハンミョウの新しい巣穴二つ。
▼水場そばで、太いアカマツ力尽き、枯れて切り倒されている。年輪を数えると五七歳だった。
▼ヒサカキの両性花二株、別々の場所で見つかる。うちの一株は、両性花の中に時折♀花も混じり咲く。
- 14日▼豊島横小草原奥の 林中でドゥロロロロッと、低く強いドラミング弾ける。アカゲラかアオゲラ来ている。
▼竹林の西出入口横で、キタテハ二頭、勢いよく追い合い。やっと訪れた春日に心弾んでいるかのよう。
▼きらめく陽光の中、ビロードツリアブ、顔見せ。金茶の和毛光らせて、悠々とホバリング(土田泰)。
▼シュンラン、大ぶりの花四輪、咲かせている(岸田興)。
▼神戸層群の尾根に、カンサイタンポポ一輪、つぼみつける。
▼東斜面のあちこちで、ツクシ顔出し(土田明)。
▼深く積もる落ち葉の裏で、エサキモンキツノカメムシ一頭、背にハートの御紋背負ってまだ冬の眠り。
- 21日▼リョウブ新葉展開。枯れたような小枝から出た薄黄緑の柔らかな小葉が、逆光に淡く透けている(土井)。
▼アカマツの小枝に腹ばいで、ウバタマムシ日光浴(谷)
▼南小草原に、ヒメスミレ一〇数株、点々と咲いている。島熊山で見るのは初めてのこと(土田泰)。
▼メジロ七―八羽の小群、木から木へ慌ただしく移動。
▼ヤマモモの♂花穂、赤み帯びつつ伸び膨らむ(社)。
▼林縁に積もる落ち葉の中、クビキリギス一頭、冬のまどろみから目覚め。緑の体色が鮮やか(浜口)。
タヌキの棲み続けられる山をめざして
竹間伐の向こうに見えるものは
「島熊山はノアの方舟…そこに暮らす多くの生き物が共存できる未来を作っていこう」との呼びかけで始まった竹林の間伐、雑木林再生への道のりは、1999年1月以来ちょうど10年が過ぎ、今年11年目に入った。この間、実に多くの人たちが共生の未来を切り開こうと、無償の汗を流してきた。それは偉大な陽の力に包まれて、伐採跡に足の踏み場に困るほど多くの実生をはぐくむこととなった。だがいま、伸び始めた実生たちは一体どこに向かおうとしているのだろう?虫や鳥、小さな獣たちは前より暮らしやすくなっただろうか?仲間の数が増え、見たこともない他者はやってきたのだろうか?ヒトが自然の織り成す連鎖の網を紡ぐことはできないにしても、せめてささやかな一助にはなりたいものだ。それができるのが、多分、今なのではないか。島熊山を巡る連鎖の頂点に立つタヌキが、いつも、いつまでも安心して棲み続けられる山を目指して、この1年を歩んでいきたい。
12 月
- 13日:▼ネザサ茂る林床に、シュンラン、コクラン、人知れず根づいている。コクランは枯れた花軸伸び立ち、昨夏に花つけた痕あり。歩く足下からはクロコノマ チョウ一頭、黒い影残し、音もなく飛び立つ。
- 20日:▼山はすっかり初冬の装い。コナラ、アベマキはどれも茶に染まり、風渡るたびハラハラと葉が舞い落ちる。
▼淡い茶の小草原で枯れたチガヤを分け見れば、それでも奥には緑なすコケ地表を覆い、林縁の落ち葉の間には、カンサイタンポポやヤブタビラコのロゼットが緑なし息づいている。
▼今冬一番の冷え込みの中、卵まだ産めないジョロウグモ♀散見。触れても動き鈍い。
▼黒熟したシャリンバイの実、果肉なめるとほろ甘い。
- 26日:▼マメヅタやコケ(SP)びっしり身にまとい、大きなコナラ、悠然と冬空に立つ。
▼今年初めて花つけたセンダン、すっかり落葉し、小枝一杯に淡い茶色の実をつけている。
▼林中にヒイラギの花、白く瑞々しく咲いている。
2010年 1 月
- 10日:▼若いハンノキの幹に、誰が開けたか径二oほどの穴点在。穴からは樹液漏れ、木屑が掻き出されている。
▼落ち葉降り積む林縁を歩くと、チヂミザサ、イノコズチ、いつの間にちゃっかりズボンについている。
▼手入れ進む元竹林の獣道に、適度に間隔を開け、点々とタヌキのフン三〇カ所以上。仲間を求め、孤独な存在を訴えているよう。
- 11日:▼背高いコナラの樹冠に、小枝集めてカラスの巣一つ。
- 17日:▼寒さ緩んだ林中に、コゲラ二羽、ガツガツと全身でアカマツにクチバシ打ちつけつつ採餌.(高妻)。
▼枯色の南小草原に、ヤマジソの香ほんのり漂う(社)
▼観察路傍で、バサバサと突然ヤマシギらしきが飛び立つ。警戒域ギリギリまで我慢していた様子(高妻)
- 19日:▼尾を上下動して、クロマツ林にビンズイ初見(土田)
▼何羽ものメジロ、上下左右に急旋回しつつ、空中群れ飛ぶハムシの中へ何度も飛び込んでいる。フライングで羽虫を捕らえ、空中で食べている(土田)。