歳時記

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歳時記は隔月で発行される、当会の会報「雑木林通信」の第一面を飾っている記事です。
豊中市でこんな自然について発見、気付いたことが有りましたら、些細なことでもメールでお知らせ下さい。近隣の市町村でも結構です。例えば*月*日、何処そこで、今年初めて何々を見たとか聞いたとか・・。面白い発見をしたとか。

春の陽を独り占めするかのごとく綺麗に輝く竹林。竹の伐採が行われた別の場所では、ニョキニョキと多様な樹木の芽が伸びていました。(4月23日 武田)
     3 月    


     4 月    



     11 月    


     12 月    



     1 月    



     2 月    



     3 月    



     4 月    

カンヒザクラ艶やかによみがえる

「あの赤い花は何ですか?」と、Sさんの弾む声が背を打つ。淡い枯れ色に染まる南側小草原で、月1回のモニ1000調査に打ち込んでいた時のことだ。「赤い花?今の時期なんだろう?」。呼ばれるままに引き返して林縁の奥を見上げると、なんとそこには艶やかなつぼみを満載したカンヒザクラが1株、悠然と立っているではないか!これには驚き、またどれほど喜んだことか!実はそこからほど近い林中にあった同種の大木が、一昨年、前触れもなく突然花開くことをやめ、島熊山でカンヒザクラは絶滅したのだと諦め落胆していた。それが今、鮮やかによみがえったのだ。すっかり落葉した木々の奥に、濃い桃紅色のつぼみがびっしりと下垂して、実に艶やかだった。近くでさらに2株が新たに見つかり、嬉しい早春の便りとなった。

     2 月    


     3 月    


明けましておめでとうございます

音も無く広がるカシナガ侵食に歯止めかけ
全力で林内環境の保全をはかろう
 「こ〜と〜し〜は〜〜何の年」――もう40年近く前、年が明け正月休みも終わろうとしていたころ、コタツに潜り込んだ頭上でこの歌が流れていた。スピーカーの奥から起ち上がる声は妙に低くトロンとくぐもっており、高く澄んだ歯切れ良い井上陽水の声から程遠く、低く奏鳴するベースの音と相まって聞く者を気だるく切ない感傷の中に引き込むのだった。島熊山にとって、「今年は何の年」なのだろう?林内を歩けば、アカマツが衰退する傍らで今や優先種となった<コナラーアベマキ>は、昨年わずか1年で3本に1本がカシナガの侵食にあい、体内に破滅の因子を抱えながら冬を越すことになった。やがてヒサカキの香が林内に満ち、ウグイスが早い春の訪れを歌い始める頃になっても、最早どの個体もが新芽の芽鱗を割るとは限らなくなったのだ。音もなく林内に危機は広がっている。これからの手当が奏功して山は小康を保てるのか、それとも力及ばずして枯死が多発し、林内環境は激変の波に晒されるのか。今年は島熊山の10年20年先を見据える重要な分岐の年になるに違いない。
     12 月    


    2015年 1 月    

細々とアキノキリンソウ花開く
「保全」を超えた積極策も必要


島熊山に現存するアキノキリンソウは、いまではわずか数株までに減った。この花を見たことのない人は、これが普通の花穂だと思われても不思議ではないが、条件の良い場所に咲く株の花穂はもっと長く豊かで、躍るばかりに花弁の勢いがよい。それが秋の陽を浴びて黄金色に輝くさまは、遠目にも実に鮮やかで豊潤だ。細身の花茎は充実した花穂の重みに耐えかねて、しばしば横に寝てしまうほど、か弱い。アキノキリンソウのそんな姿を見なくなって、もう何年が経つだろうか。細々とだが花開いている今が、この地での自然消滅を防ぎ、今後の繁栄へ手立てを講じ得る、残された短い機会なのかも知れない。
    10  月    


    11  月    

ササ刈の途上大きなオケラ見つかる
つぼみも膨らみ開花近い


「オケラらしい植物があった。いま土田泰子さんに写真を撮ってもらい同定を頼んだところ」と、14日の昼食時、会員の田村さんから弾んだ一声があった。観察路のササ刈り中、「葉の縁のギザギザに見覚えがあったので、もしや?と思い、刈らずに置いた」と言う。よくぞ残してくれたものだ!翌日改めて現場を訪れ、しげしげと眺めた。大きい!背丈は50pほどもあろうか。葉が何枚もついている!しかも中には3裂した葉まで同一株に混じっている。長ーい茎の先端に座する鋭いトゲトゲは何だろう?棘に囲まれているのがつぼみなのだろうか?何せこれほど大きな株を見たのは初めてだし、まして当地では咲いた花を目にする機会もなかったのだ。15年も前に摂津峡の人から「コウヤボウキに似た白い花」と聞いたのが微かに記憶に残るぐらいだった。写真を撮り、帰宅後さっそく植物図鑑とにらみ合いの末、土田さんともども「オケラ」であることを確認できた。雌株雄株が別々のようだ。島熊山で初めて目にできる花はどちらなのだろうか。期待を込めて待っていよう。
    8  月    


    9  月    

林中の朽ちた切り株に色も鮮やかな粘菌現れる
名はモジホコリ 動くカビといわれる

2枚の写真は、同じ切り株の同じ粘菌を1目違い、同倍率で撮ったもの。下が1日後の姿で、見れば確かに面影は残るが、注釈されなければとても同じものとは思えない。鮮やかな黄の菌体はごく普通に見られ「モジホコリ」の名がつく。普段は光を避けて枯れ木の中や落ち葉の下に住み採餌しているが、繁殖期にはアメーバ状に変形して外に現れ(上写真、変形体と呼ぶ)、たちまちのうちに姿を変え胞子を孕み(下写真、子実体と呼ぶ)、放出するという。このかんわずか1日。その変化の速ささと巧みさは、理解の枠を超えて神秘的ですらある。
(写真と文中資料は、会員の土田泰子さん提供による)
朽ちた切り株中から姿を現した粘菌(上)、翌日には変身していた

    6  月    


    7  月    

コナラの葉巻いてオトシブミがゆりかごづくり
匠の技と重ねた時間に感嘆

コナラやハンノキの若葉が展開し、形を整える4月末から5月初旬、枝先に葉がクルクルと円筒に巻かれた奇妙なものに出会うことがある(左)。オトシブミ科の小甲虫が作ったもので、母虫は自分の15〜20倍もある葉に切れ込みを入れ、2つ折りし、下から順に巻き上げながら途中で中に1つだけ産卵もし、続いてまた巻き上げて終にこの巻筒を完成するのだという。島熊山では体長5oほどの「ヒメクロオトシブミ」がその主役だ(右)。初夏の適温の助けを借りて巻筒内で孵化した幼虫は、自分を包み護る幾重もの葉を内から食べながら育ち、やがて蛹化し羽化して夏空へと旅だって行く。葉の巻筒はまさに卵が大人になるまでの「ゆりかご」であり、隠れ家であり、また食料庫でもあるのだ。母虫がお気に入りの葉に着地してから巻き終わるまで、ヒト時間で2時間を要すという。だが、寿命わずか1年の小甲虫を流れる2時間とは、恐らくヒトが過ごす160時間にも相当する凝縮された濃密な時間ではなかったろうか。
    4  月    


    5  月    

苦難を引きうけ 飄々として立つ


 「おや、これは?」と思わず目を引く変わった形の樹木。カシナガの侵食調査中、狭い範囲の一角で幾本ものそんな木に出会った。左に大きく傾いた主幹から、1本2本…と大小の小枝がほぼ等間隔に天を突き起ち上がっている(左)。状況に合わせた苦肉の策なのだろうが、ヒョイヒョイといかにもリズム良く、軽い躍動感が伝わってくる。逆に右の木は苦しそうだ。太いフジヅルが強烈に巻き付いて、まるで首を絞められているかのよう。直径20pもある幹は今にも千切れそうだ。これで根からの水が樹冠まで届くのが不思議だ。近くには他に7つに株立ちした大きなヤマモモや、自身の体内から別種の幼木を生え育てているコナラなど、苦難を克服し、それを豊かな個性に変えて生きている木々があり、秘めた潜在力を垣間見る思いだった。
    2  月    


    3  月    

あけまして おめでとうございます


 新年の目出度さを演出するナンテンやセンリョウは、葉の緑を背景として、赤色の果実がよく目立つ。いま島熊山に入ると、同じ印象を受けるものが他にも幾種類かある。地際のヤブコウジやマンリョウ、目の高さのアオキ、頭上のソヨゴやクロガネモチがそうだ。全て同じ緑と赤の2色配色を持つ。よく知られたことだが、赤と緑は補色関係をなし、合い寄れば互いを際立たせる間柄になっている。この目立つ対比はヒトの目だけでなく、野鳥にとっても鮮やかに映るらしく、2色配色はむしろ果実を積極的に野鳥に食べてもらうために進化した結果なのだという(紙谷智彦『植物はどのように鳥を誘引しているか』)。植物は果皮を赤く染めることで果実が熟れたことを鳥に知らせ、鳥はそれを見て実を食べ、果肉を栄養源として消化し、未消化の種子を遠くへ運び、フンとともに排出・拡散する。異種植物間に生じたこの進化の一致には、不思議さと驚きを禁じ得ないところだ。
    12  月    


   2014年 1  月    


落ち葉分け 我もときの子 あたま出し 

上はテングタケ。丸い頭の幼菌から直径15cmになる大人まで。右の6本は種類不明。
 雑木林再生地内を歩いたときのこと。陽当たり良い斜面の一隅に、大型のきの子が3種、20本あまりの小群落を作っていた。そこには生命という物が今し方世に出た勢いが漂っていた。胞子が着床した際の運不運から、互いが重なり肘を張り、押し合いへし合い大きくなった姿には、微笑ましさとともに生あるものの持つ悲哀が同居しているようでもあった。


    10  月    


    11  月    

ミヤコグサの小草原に
イヌコウジュ 突然群落で咲く

 ミヤコグサの小草原を歩いていると、フと良い香りが漂ってきた。どこだろうと辺りを見回すと「あった」、足下に、小さな薄桃色の花を穂状につけた草が点々。イヌコウジュだ。去年までここにはなかったのに。しかも1株2株ではない。数10株が群生して、いちどきに咲いている。「もしかして…」と考えると、突然腑に落ちた。これまで南の小草原に毎年咲いていたのは知っており、昨秋の草刈り時、その種が何かの拍子に“ヒトの手”で運ばれたのだろう。ヒトを介した種子散布の一形態には違いない。

    8  月    


    9  月    

緊急報告 島熊山をカシナガが侵食 初めてのこと
9本の穿入木を手当

 一昨年来の心配が、ついに現実となった。島熊山にカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)が侵入してきたのだ。頭の中では十二分に承知していたこととはいえ、穿入の証拠となる真新しい木屑が、親しんだコナラの根際に散らかっているのを目の当たりにした時は、さすがに衝撃が走った。膝をつき身体を屈めて、白っぽく光る木屑を改めて確かめながら、体内にカシナガが何頭も食い込んだ樹木のこれからを思うと、思わず悲しみががこみ上げてくるのを禁じ得なかった。
 カシナガに孔を開けられ、侵食を受けた木(以下、穿入木)を島熊山で初めて見たのは、夏至が過ぎ、6月も終わりにさしかかった29日のことだった。既に3年前から箕面山中でカシナガの侵食拡大防止に取り組んでいる「NPO法人・みのお山麓保全委員会」(以下、山麓委)のTさんから「箕面の山で(今年の)カシナガの食害が出てきました。(皆様の)活動地で食害が始まっていないか、点検して下さい」との情報と助言をいただいたのが始まりだった。一報を受け、初動が遅かったかも知れない、との不安がよぎった。それだけにとにかく、かねて「最も危ない」と読んでいた〈豊島高校との境界―箕面市船場西との境界尾根―新御堂筋〉に挟まれた尾根散策道をまず調べに向かった。これまでに二度、「島熊山を北に向かって歩く」として、守る会で遊歩した小径だ。この小径沿いにはφ30cmを超えるコナラやアベマキが50本余り生育し、それ以下を含めると悠に100本を下らないコナラ属の木々が並んでいる。半数を占めるこの大径木こそカシナガ侵入初期の標的になりやすい“要注意木”であるとされ、しかもその多くがカシナガの好む3大環境要素=@明るくA風通し良くB下草が無いか乏しい=を満たした“危険地帯”にあった。そして調査を始めて20分後、ミヤコグサ小草原から豊島高校境界へと昇る途中に、早くも木屑を噴いた太いコナラが見つかったのだ。

    6  月    


    7  月    

島熊山緑地にゴヨウアケビ見る  アケビ3種が併存
 「島熊山緑地協議会」恒例の、春の自然観察会でのこと。少年文化館駐車場横のフェンスを入ってすぐ右に、アケビの花が見頃に咲いていた。白紫の大きな雌花に小さめの雄花、葉は5小葉、と皆で確かめる。数メートル歩いてミツバアケビも登場。こちらの雌花は黒紫で少し小ぶり、雄花はさらに小さい黒紫で葉はミツバ(3小葉)。「な〜るほど」と、両者の違いに納得して、皆さらに歩く。雌花が黒紫のミツバアケビ再び登場…と思いきや、葉は5小葉。アレ? おまけに葉にゆるい鋸歯もある。
 …帰って調べ、アケビとミツバアケビが自然に交配したと思われるゴヨウアケビとわかりました。 (文:北緑丘 易 信子)
    4  月    


    5  月    

アレッ?ちょっと見は・・・実
その実は虫こぶでした

↑アレッ、ソヨゴの大きな実! でも…少し変。長ーい柄がない。赤くもない。表面は凹凸だらけ。
←アレッ、アオキの実が熟れずにまだ残っている。でも…小さいし形がいびつ。栄養不足で大きくなれず緑のままなのかな。片側だけが真っ赤なのも不思議。
──これ、実は両方とも実ではなく、虫コブなのだ。中に寄生バエの幼虫が住んでいて、食料庫を兼ねた逸品なのだ。今年は不味い実まではや食べ尽くされているのに、虫コブがまだ残っているのは何故?野鳥はそれが本来の熟した実ではないと、どこかで識別しているのだろう。
    2  月    


    3  月    

つくろう 深く豊な雑木林
めざそう 虫や鳥けものたちの棲みやすい場


 明けましておめでとうございます。 島熊山の諸活動も、総会に続く「清掃ハイキング」「モニ1000植物調査」で今年の幕を開けました。新しい1年、またよろしくお願いいたします。
◆今年は「森の手入れ」が始まって14年目を迎えます。いま現役で活躍されている方々、そして諸事情からこの現場を離れられた多くの方々の偉大な努力の積み重ねによって、あれほど鬱蒼としていた竹林は大きく後退し、跡には雑木林再生の萌芽が豊かな色合いを帯びながら着々と根づいています。10年先、20年先には、一昔前に見られた〈アカマツ−コナラ林〉の復活が大いに期待されるところです。
◆ただ、その過程で忘れてならないことがあります。万葉の遙か昔からこの地で連綿と命の綾を紡ぎ続けてきた、名も無い先住の生き物たちのことです。開発の荒波は無数のけものや鳥、虫や草木を一気にこの狭い丘陵に追い詰めました。もはや逃げ場はありません。島熊山は豊中最後の〈聖地〉となりました。「森の手入れ」がめざすのは、かの生き物たちが棲みやすい場となる手助けをすることにあります。それを忘れて手入れ活動は成り立ちませんし、いかなる未来を創ろうとするのかも決して見えてこないのです。ことし1年をかけて、このことを再確認していきたいと考えます。
    12  月    


    1  月    

 転がる玉子突き破り
  カニノツメにょきにょき

 砂浜で、利き腕を降るシオマネキのはさみそっくり。ツメは白も淡い朱色もあった。後日には三本ツメの親菌体も見られた。
◆ミヤコグサの小草原、刈り積まれた草が朽ち始めた一角に、その茸は見つかった。幾つもある白い玉子様のものが子で、親茸はそれを破って出てくる。「サンコタケ」か「カニノツメ」かと意見が飛んだが、玉子から突き出した”ツメ”はその時どれも2本だったので、カニノツメに落ちついた。
◆試みにツメの先端、内側の粘液に触った指を嗅ぐと、何ともいえず臭い。これが話に聞いた臭いだったのかと納得する。幼菌の中を見たくて、1つを取り上げ白い皮をめくると、驚いたことに中は透明なゼリー状物質で満たされており、濃い鶯色に沈んだ楕円体の固まりが1つ、ゼリーに包まれて収まっていた。「親の素」なのだろう。まるで玉子の白身と黄身とのようで、どこかエイリアンの不気味さを漂わせていた。この白身や殻からは猛烈な悪臭は立ち昇らず、むしろ茸類特有の香りが鼻をくすぐったのが不思議でもあった。(写真提供=土田泰子さん)
    10  月    


    11  月    

黄昏の小草原で 
 しばしルリタテハと遊ぶ 


 腕の上で、初め強かったルリタテハの警戒心はすぐに薄れ、翅を八の字に広げてすっかり落ちついた。日没後の残照が濃い瑠璃色の翅に微かな赤みを添える。胴と尾は驚くほど丸々と太く、翅の付け根には柔毛がふさふさ伸びている。雄なのだろう。近くをウスバキトンボや仲間のルリタテハが過ぎると、追尾にバッと跳躍し勢いよく飛び出す。シャツを通してその衝撃が伝わる。暮れなずむ空に姿は消え、やがてまた軽い衝撃と共に腕に降り立つと、翅を深く広げて落ちつく。それを何回か繰り返して30分、やがて前触れもなく飛び立った後、迷いながら次に舞い降りたのは少し離れた草の葉だった。初めに会った時同様に翅を閉じ、立てた姿で、今度こそ1日の眠りに就いていった。

    8  月    


    9  月    

生まれながらの生き抜く知恵
 後翅噛ませて捕食逃れる 


 パチンと大きく見開いた黒い切れ長な瞳、ツンと上向きに尖った鼻、、足には白地に黒帯のストッキングをつけて胸を張る小型の愛らしいチョウ。でも…よく見るとどこか変。後翅の後部に本来あるはずの長い「尾」と赤紋、丸い黒紋が見あたらない。その部分がそっくり欠けている(写真では立てた翅の右部)。実はこれ、野鳥の一撃を受けた傷跡なのだ。このチョウは静止時、ヒトが手を擦り合わせるごとく、閉じた翅を絶えずゆっくりと上下に動かす。その時、微動する二本の長い「尾」と黒い紋が作る光景が、鳥にとってチョウの触覚と目玉に見え、そこを頭部と錯覚した鳥は捕食に向けてくちばしの一撃を加えるという。翅を噛みとられてもチョウは致命傷を負うことなく、面食らう鳥の一瞬の隙をついて難を逃れることになる。誰に教わったのでもない、生得の生きる知恵が垣間見られた1コマだった。

    6  月    


    7  月    

念願かないやっと出会えた マツの幼芽 


 どこで見たのか今ではどうしても思い出せないが、心に残る1枚の画像があった。マツの発芽をとらえたものだった。実生にとってはきめ粗いほどの土を押しのけて、この世に生まれ出た幼芽が種子の帽子を被ったままの姿で「やった!」と肘を張っている光景だった。それはもう、森を流れる時間の中ではほとんど瞬間といって良いものだったろう。以来10数年、「こんな写真を撮りたい」と思ってきたのが、嬉しいことに今年、偶然にも念願かなった。別の被写体を求めて歩いていた折、林床に積もる落ち葉の中から毅然と起ち上がった幼芽に出会ったのだ。幸運という以外にない遭遇だった。

    3  月    


    4  月    


    5  月    

もうすぐ子育て エナガ


 3月8日、島熊山尾根筋を歩く。 エナガが2羽で行動を始めていた。繁殖の季節だ。
すぐ目の前の笹の茎にとまった!距離はほんの1mほど。こちらを気にする様子もない。エナガほど物怖じしないというか人を気にしない鳥も少ない。まるでこちらの存在を無視している。しかし本当に可愛い!そのうちに羽を口にくわえて運ぼうとした。どうやら自らの抜けた羽のようだ。
自らの羽を使って巣作りをするのだろうか。この森のどこかで、小さな命がまた生まれるのだろう。

    2  月    


    3月    

ロウバイ咲く


豊中市内一斉の水鳥調査で、早朝、少年文化館に集まった時に咲いていたのを撮った。淡い黄で半ば透き通る花弁は、緑が抜け白黄化した葉と混在して、スッと体をよぎる寂しさと清さを漂わせていた。「しらじらと障子を透かす冬の日や室(へや)に人なく臘梅の花」(植物短歌辞典より)とは窪田空穂の詠んだもので、ロウバイの持つ風情をよく伝えている。この抜ける寂しさを補うかのように花の発する香りは強く、辺りに澄んだ鋭い香気を漂わせていた。それにしてもこの香りに引かれ、厳冬期に送受粉を手助けするのは、いったい何虫なのだろうか。

    12  月    


    2012年 1月    

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