歳時記

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歳時記は隔月で発行される、当会の会報「雑木林通信」の第一面を飾っている記事です。
豊中市でこんな自然について発見、気付いたことが有りましたら、些細なことでもメールでお知らせ下さい。近隣の市町村でも結構です。例えば*月*日、何処そこで、今年初めて何々を見たとか聞いたとか・・。面白い発見をしたとか。
または、ゲストブックに書き込んでくださってもかまいません。
ヤツデに見た3/8らせん

◆歳時記のネタを探して小径を歩いているとき、そばで見え隠れするヤツデのことがフと気になった。身近な樹木でありながら、大きな常緑の葉を持ち、小花が球状に集まった白い花をつけることぐらいしか知らない。そもそも《ヤツデ》の名の由来は何処にあるのか。小径奧の半日陰に育つ高さ1mほどの個体を調べるうちに、この事は解った。◆一見して気づくのは、葉が幹の頂部に集中していること。大きく重い葉を支える葉柄は太く堅い。それが10数本も、背丈1m直径4pのか細い幹の頂部に所狭しと生えるものだから、葉ばかりが妙に目立ち、幹は重みで倒れんばかりなのだ。葉柄の付け根は幅3pほどにもなり、幹に深く食い込んでいて、少しの力では全く動じない。葉柄同士は、上下には厚み1本分の隙間もなくギュッと詰まっており、それ故にか、左右はお互いが重ならないように巧く間隔をとって、細い幹の周りを巡っていた。◆配列の規則性を探るべく、上から覗いて解ったことは、ある1本を基点にして順に上に追っていくと、9本目で基点の位置に戻ってくることだった。つまり8本が1組となって、少しずつずれて、幹を順に上がりつつ巡っていたのだ。◆後に冬芽図鑑で調べると、これを3/8らせん式配列と規定していた。基準点の次は少しだけ昇りつつ135度回って2本目が現れ、次はまた135度回って3本目が現れ、順に135度の間隔で巡って、1本目と同じ位置に9本目が現れるまでに幹上を3周するのだ。◆展開角を測っていないので断定はできないものの、あの一見乱れた葉柄の配列は、まさに3/8らせん以外ではなかった。《ヤツデ》の名の由来も、8本を1組の手と見なしての銘々だったのかと、ハタと思った次第だった。
灰色の細い幹に取りつくようにして、鮮緑色の葉柄を八方へ拡げる。上端に見えるのは頂芽(上)。十一裂する大きな葉

2005年12月
06年1月
子ダヌキ カキの木に登る
幹や枝に爪の掻き傷

白く見えるところが爪による掻き傷。木肌が剥がれている(写真左、中)。枝の先端部に成る実は鳥やチョウたちの取り分。タヌキも手が出せない(写真右)

◆カキの木は高さ9m、胸高直径8pにも満たず、いかにも細身で、それがタヌキならよくこの木に登れたものだと思うぐらい。だが確かに下から3.5m辺りまで掻き傷が残っており、そればかりか、地上3mで分枝した小枝(ここでは写っておらず、中写真のすぐ下にある)の途中までも爪の跡がある。その小枝の先には、涙をのんで諦めたカキが二つ三つ、濃い朱色に輝いていた。
◆この小枝を這い伝うには体が小さくなければとうてい無理だ。樹下に点在していたフンも小さかった。登ったのは子ダヌキだったのだろうか、それとも他の小動物だったのだろうか。
10月
11月
キリギリス類は花が好き?
◆ツユムシの幼体がユリの中の潜り込み、花弁に落ちた花粉を食べている。純白の花弁に山吹色の花粉、緑の幼体と、とり合わせが鮮やか。四月にはタンポポの上で、キリギリスの幼体がやはり花粉を食べるのに良く出会う。栄養に富んだ花粉は、幼体の成長にかかせないものなのか。
8月
9月
十五日間で三千頭の死・・アリ家族の墓場を見る

全体(左)と部分の拡大(円内)
あり家族の墓は、25日以降も7月1日の大雨まで、日ごとに大きくなっていった。
◆梅雨入り宣言後、晴天が続いたある日、林縁の側溝に茶褐色の小さなアリが多数、採餌でもないのに群れていることに気づいた。群れは11×12pほどのやや歪んだ楕円形で、まばらな周辺部以外は無数のアリが積み重なっており、中心へ寄るに連れ盛り上がって層を形成していた。動く個体に目を奪われていたものの、よく見ると多くは生の気配がない。指先につまむと、やはり死んだアリの集まりで、働きアリの墓場だった。全体に随分と乾いており、結節部が簡単に折れて尾部や頭部が小さな塊となり、掌上で転がった。動いていたアリは、死んだ仲間を運んではここに積み上げて、また近くの巣へと帰って行くところだった。但しアリにも個体差が見られ、死骸の山を乗り越えて歩きにくいなかを中心まで運ぶ几帳面派もいれば、周辺に置いてさっさと引き返す要領派もちゃんといたのには、さすがに驚いた。
◆それにしても、この小山に一体幾つの死骸があるのだろう。指先の軽い一つまみに10数頭が数えられ、山の大きさから推定すると、3千頭は十分超えていただろう。側溝の底に積み上げられた山は雨の度に流されており、先の大雨があった6月11日からこの日6月25日まで、15日間で3千頭以上が累々と運ばれたことになる。1日に2百の死が繰り返されていたのだ。
◆そもそも働きアリの寿命は1年とも4〜7年とも言われる。仮に1年とし、かつすべての死が寿命を全うしての死だとすれば、この墓を取り巻く潜在的個体数は約7万3千頭と推定される。また、アリは同種でも異家族には強い排他性を示すとされ、したがってこの墓場は同一家族の手になるものと思われる。その7万3千頭も、1頭の女王アリを唯一の例外として、1年のうちに順次死に絶え、新世代に入れ替わってしまうのだ。
6月
7月
丑三つ時・・・確かに「眠る」草木もいる

◆夜。家々に電気の通う現代には最早死語となった闇の支配する世界も。虫や草木にとっては未だ厳然として生きている。◆今、夜気に放たれるスイカズラの香に包まれつつ、千里中央から歩いての帰宅途と上、いくつかの草木の「眠る」姿に出会う。いつも気になるのがヨモギ。茎の先端部に伸びる葉が6〜10枚一群となり閉じている。下方の葉は普通に展開しているのに、この上端部だけがすぼまっているのだ。柔毛に覆われた白い葉裏が、街灯の弱い光にでも良く目立つ。タンポポの花が雨を予感して、花粉を流されまいと花を閉じるのとは異なり、未だ花のないヨモギがこの部位のみを閉じる意味が、残念ながら読み解けない。このすぼまりは翌朝、出勤途上にはほとんど開いている。◆マメ科が葉を閉じて「眠る」のはよく知られたことだ。カタバミやミヤコグサ、クズ、はては開削の矩面に吹き付けられたイタチハギなどが夜の山に葉を閉じ「眠る」。面白い事に閉じ方に大きな違いがあって、ミヤコグサやシロツメクサは、葉表を隠し葉裏を見せている。人の手になぞらえば、掌を葉表とし指を葉とした場合い、親指、人差し指、中指の3本(3枚)を伸ばしたまま軽く指先を合わせた状態に折り畳んでいる。クズやイタチハギは逆に各小葉を下方に垂らして葉表を見せた自然体で「眠る」。イタチハギは10対ほどの小葉が主脈から点々と垂れ下がり、さながら竿に洗濯物を干し並べた様で、これもまた面白い。
4月
5月
老コナラの生き様におもう

老コナラ◆山中の小さな水場近くに、いかにも年老いたコナラが1株立っている。大人の胸高位置で主幹が二つに分かれ、その下に、分厚いサルノコシカケを上下逆さにしたような、上面が平たい大きな出っ張りを持つ。それはのんびりと大口を開け、下あごを突き出したヒトの顔にも見える。幹表面には、並のコナラには無い深くひび割れたシワが撚れて縦横に刻まれており、それが年老いたことを一層際立たせている。
◆突き出した下顎には常緑の幼木が3株4株と根を下ろし、幹表面の水場側にはマメヅタも這う。それらは日々に老コナラを蝕み、年老いた身にとって確かに負担に違いない。だが、コナラは口を閉じることも、身を震わせて振り払うこともしない。その全てを受け入れてたたずむ。それは老コナラの諦念ではある。また同時に、ただ一つだけ起きた厳しい現実でもある。今より以前、120億年の時空の総てを内に含み消化した壮大な結果でもあるのだ。
2月
3月
風が舞い、ビューッと林を吹き抜けて、年明けにやっと訪れた冬将軍の洗礼を受け、コナラやアベマキも枝先まですっかり葉を落としてしまった。眩しい青空を時おり綿状の白い雲が音もなくよぎり、淡く輝いていた周りの光景はそのたびに急速に色を失う。ほのかに身を包んでいた暖かさはたちまちのうちに冷気と入れ替わる。いま元気なのは鳥ばかり、虫たちは木や葉の隙間や地面に潜り込み、じっと息をひそめている。それでも目をこらすと、コナラの枝先には芽鱗に身を固めた冬芽が膨らみ、ハンノキは早くも一面に花穂を下げて、来るべき春の訪れを待っている。
12月
05年1月
フンに漂う寂寥感  縄張りの主張か 仲間を求める呼びかけか


タヌキの糞◆尾根筋の南を神戸層群から裸地までつなぐ新しい観察路への入り口、そこにある白い大きな石の上に、黒っぽいフンが1本、「どうだ」と言わんばかりに明らかな自己主張を持ってひり落とされていた。そこは、神戸層群から南裾の小草原へと下りる小径が開けているものの、陽当たりは悪く、余程の日照りが続きでもしない限り地面はいつも湿り気を帯び、下草が今ほど繁茂していなかった10年ほど前は、草の種が落下する晩秋から冬にかけて、中国東北部から遙か渡ってきたミヤマホオジロが、黄の顔に黒眼鏡の悪党面で冠羽を上下させつつ、種子をついばみ拾う姿がしばしば見られたものだった。
◆石は長径25p、短径20p、高さ17pほどの楕円体で、上面は一方が長径の端からほぼ垂直近くに落ち込み、そこからもう一方へとなだらかに滑り落ちており、フンはその4分の3を切り立つ石上に残し、4分の1は自重に絶えきれず岸壁の下に千切れて落下していた。日頃でも陽当たりの悪いこの場所で、しかも薄曇りの夕刻という悪条件が重なる中で、逆に石の白さがその一角に浮き立ち、黒っぽいフンは暗い中にも一目瞭然として目に飛び込んできた。まさに目立たさんとしてここに落とされたに違いなかった。
◆近づいて良く見ると、表面は 滑らかさとつやを既に失いかけていた。数日前からの雨に洗われて溶けた表面には、複雑な線画を刻むハラオカメコオロギの♂らしい羽が弱い光を反射して陰影を描いており、草木の種子が丸く、また三角をして埋もれていた。中に混じる糸状のものが動物の毛や羽でなく、草の繊維であると判ったとき、空腹に呵まれている姿が忍ばれ、辛く侘びしかった。
◆落とし主はそれでもこのフンを誰かに向けてひり落としたのだ。一体誰に? フンを目立たせたのは縄張りの主張ではなく、逆に仲間を呼びたかったのではないか。周りに誰も居ぬ孤独感に絶えきれずに、居たら返事をしてくれという、悲痛な信号だったのではないか。このフンからは、一人座して遠くを見つめる落とし主の寂しい後ろ姿が、そこはかとなく漂い来るのだ。
10月
11月
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