オケラ キク科の多年草 第63回
昨年の島熊山の大ニュースといえば、オケラの新しい株が箕面市との境の里道沿いに見つかったことだろう。今まで細々と尾根筋の道の脇にあった数株は花をつけたことがない。図鑑でしか見たことがなかった花が10月に新たに見つかった株に咲いた。それはちょっと図鑑のものとは違った印象だった。実はこれは雌花ばかりの雌株だった様である。
オケラは本州、九州、朝鮮半島、中国東北部に分布し、草原や林道のような明るい場所に生育する。草丈は30〜60cm程になる。雌雄異株で、雌花(雌しべのみで雄しべがない)と両性花がある。葉は1〜2対の羽状に分裂するが、上部はへら型で分裂しないことも多い。縁には鋭い鋸歯がある。島熊山の尾根筋にあるオケラはいつもこのへら型の葉が数枚ついた姿であった。
←花は9月〜10月頃、茎の頂に頭状花を1つける。頭状花は、特徴のある魚の背骨のような細く羽状に枝分かれした暗紫色の総苞片に包まれていて、20個ほどの小花からできている。1小花は筒状花で先は5裂し、めしべは1本で先が2裂します。おしべは5本でめしべに沿うようについているのだが、島熊山で見つかった花にはおしべが見当たらなかった(雌花)。
2月に綿毛のついた果実ができていたので採集して観察した。コウヤボウキの果実と比較してみると、綿毛の毛はコウヤボウキではまっすぐな毛であるのに対し、オケラの綿毛は細かく羽状に枝分かれした毛で、果実の表面にも微毛が生えていた。コウヤボウキの果実に比べて細くて小さかった。もしや、未受精のため未成熟なのではないかと思い、調べてみると、残念だがそのようで、成熟した果実では、コウヤボウキの果実のようにふっくらとしていた。
↑島熊山で採取したコウヤボウキとオケラの果実
ヒヨドリバナ キク科の多年草 第62回
秋の花というと、菊の花を思い浮かべるのではないでしょうか。そこで島熊山のキク科の花ということでヒヨドリバナを取り上げてみました。ヒヨドリバナの仲間には、フジバカマやサワヒヨドリ、ヨツバヒヨドリなどがあります。どの花もとてもよく似ていて、あのアサギマダラが好んで吸蜜に来る花です。フジバカマは、秋の七草にも歌われてますが、野性のものは絶滅危惧種です。サワヒヨドリは名のごとく湿地や湿り気の多い所に生育します。ヨツバヒヨドリは、ヨツバヒヨドリは山の草原などに成育し葉が3〜4輪生します。ヒヨドリバナはもっと里近くで見られます。名の由来はヒヨドリが鳴く頃に咲くことからだそうですが、ヒヨドリは今や都市化して年中見られるのであまりぴんと来ませんね。島熊山にあるヒヨドリバナは、林縁の半日陰のようなところでがんばっています。
↓9月21日老人ホーム階段横
高さは1〜1.5m程になり、葉は対生し、長楕円形で先と基部は尖ります。縁には粗い鋸歯があり、表面には毛が生えています。花は、キク科の特徴で総苞に包まれた頭花を集散状に多数枝先につけます。一つの頭花は、5個程の小花よりできています。小花は筒状花で、先は浅く5裂します。めしべは先が2つに分かれて長く花冠より突き出します。11月から12月には白い綿毛のついた実ができます。
(北緑丘 土田泰子)
タラノキ ウコギ科の落葉木 第61回
9月の森の手入れの帰り、道路から林縁の木の樹冠に、白い冠のごとく花が咲いていた。社さんが、「あれ何の花?」と、タラノキの花でした。そうだ今月のミニ植物図鑑はタラノキにしようっと思いました。
タラノキは、山菜としてよく知られる、「たらの芽」を採る木で、新芽を天ぷらにすると美味しいですね。タラノキはウコギ科で、ウコギ科というと山菜として美味しいものが多いですね。ウドやコシアブラ等、独特の香りが魅力です。しかし、この時期のタラノキは、その全身に恐ろしい棘をまとい、大きな葉を広げて近づきがたい雰囲気です。林縁によく生え、いわゆる先駆植物(荒地に最初に生えてくる植物)です。幹は殆ど枝を分けず、まっすぐ伸びて、枝先に葉を集中させています。幹や枝には鋭い棘があります。葉は2回奇数羽状複葉で、全長が50-100cmにも達する巨大な葉です。小葉は卵形で先が尖り縁には鋸歯があります。葉軸の基部や小葉の基部にも鋭い棘があります。動物に食べられないように武装しているんでしょうか。
8-9月ごろ枝先に大きな複総状花序をつけて、白い花を多数咲かせます。花弁は5枚、雄しべも5本あります。蜜は花盤に出て、ヤツデなどと同じつくりで、虫たちには大変人気があり、特にハチやハエやアブのようななめる口の昆虫に大人気です。10月頃、実が黒く熟し、これまた、キジバト、ヒヨドリ、ホオジロ、メジロなどの野鳥に人気があります。
冬には葉が落ちて枯れた棒のような姿になりますが、その冬芽はまた実にユニークで、横顔は、ウルトラマンの人気怪獣「カネゴン」を思わせる風貌です。山菜として楽しむ場合は、一番の芽をとったら、わき芽は残すようにしてください。わき芽まで採ってしまったら、もう枯れてしまいます。毎年タラノメを楽しむため、山菜採りのマナーを守りましょう。
ヤブニッケイ クスノキ科クスノキ属の常緑高木 第60回
6月半ば、島熊山の新御堂筋近くの林内で、ヤブニッケイの花が咲き始めているのに出会った。長い柄の先に線香花火のように散形に分かれた先に数個の花をつけていた。クスノキの花が咲くと、遠めに白く感じるほどたくさんの花が咲くが、それに比べてずいぶん寂しいなと感じた。(写真右)
ヤブニッケイは福島県以西の暖地に生える常緑木で、島熊山にも多数ある。生薬として使われるニッケイ(根を乾燥したものが桂皮)に似ているが、役に立たないことからヤブニッケイという名になったとの事だ。葉は縁に鋸歯がなく(全縁)で光沢があり、三行脈(主脈と左右の最初の側脈が目立つ)であり、葉を揉むとクスノキ科独特の芳香があるところは、クスノキとよく似てる。クスノキと比べると葉は肉厚で、葉柄や若枝が緑色であることでクスノキとの違いを感じる。またヤブニッケイの葉序は、一見対生のように見えるが、いわゆるコクサギ型葉序で、右右左左と同じ側に2回ずつ葉が出てこれを互い違いに繰り返す。葉脈に沿っていぼ状ににふくれた虫こぶ(ニッケイハミャクイボフシ)ができていることも多い。
花は両性花で直径7mm程、黄緑白色の花被片(がくと花弁の区別がない)が6枚、おしべが12本ある。拡大してみるとおしべの先が横に膨らんで、その両側に黄色い葯(やく)が見え、なかなかかわいい。(写真下右)
果実は12月ごろ、青から黒く熟し、中には一個の種子が入っている。クスノキよりも一回り大きく、卵形で、まるでエッグスタンドに立てているかの様な台座が付いている(写真下左)。これは花の基部の花托という部分で、クスノキ科では良く目立つ。
エゴノキ エゴノキ科エゴノキ属の落葉高木 第59回
5月の活動の時いつも昼食を食べているミヤコグサの草原北西隅の林縁にあるエゴノキの花がかわいい白い花をつけていた。ここには3株ほどのエゴノキがあるが、日当たりがあまりよくないせいか、あまり花つきが良くなかったり高所で咲いているのでなかなか気づかなかったりが多いが、今年は白い花を間近で見ることができた。花が終わると、めしべと子房を残して、花冠全体が椿の花のように落ちていた。その殆どが上を向いて落ちている。以前、エゴノキの花が水面に落ちて、まるで花筏のようであったことを思い出す。花冠の外側に星状毛があるそうで、この毛が水をはじいて水に浮かんでいたのか!
エゴノキは、日本全国や朝鮮中国の山地丘陵に成育する落葉木で、公園や庭木としてもよく植栽されている。明るい環境を好むので主に林縁に多い。5月〜6月、新枝の先に1〜4個、2〜3cmほどの柄のある花を下向きにぶら下がるようにつける。花は筒状花で、5深裂し、ラッパ状に開く。おしべは10本、めしべは1本でおしべより長く突き出している。直径1〜1.5cmくらいの球形の実をつけ秋に熟す。果実は有毒で、果皮にエゴサポニンを多く含み、魚毒(実をつぶしたものをまくと魚が浮き上がってくるところを捕まえる)として使われた。中の種は、ヤマガラが好んで食べる事で知られる。エゴノキの名は、この果実の毒性から「えぐい」がなまってエゴノキとなった。
葉は互生で、ごく短い柄があり、両端が尖る。縁は、全縁または、前半分に浅い鋸歯があることもある。葉の裏を返すと主脈の脇に微毛がある(左写真円内)。
エゴノキの冬芽はなかなか特徴があって面白い。芽が上下2段に並ぶ。⇒
またエゴノネコアシという面白い形の虫こぶができる。エゴノネコアシアブラムシが作る虫こぶで、6〜7月バナナの房のような先端から有翅虫が脱出する。その後アシボソ(イネ科の草)に移動し、再び秋にはエゴノキに戻りエゴノキの芽に産卵、翌春芽が変形してエゴノネコアシができる。エゴノネコアシは、島熊山のエゴノキにも時折見られる。
エゴノネコアシ⇒
マンリョウ ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑低木 第58回
庭木として良く植えられているマンリョウですが、島熊山の林内にもあちこちありますね。どこかで野鳥が実を食べて、島熊山の木の枝にとまって糞をしてそこから芽生えたのでしょうか。どちらかと言うと林縁に多いような気がします。葉の影に下向きに垂れ下がるように多数の実をつけています。実は散形につき、さらに総状につけるので、かなり沢山の実がついています。
古くからお正月の縁起物として、使われますね。センリョウ(センリョウ科)は「千両」、カラタチバナ(ヤブコウジ科)は「百両」、ヤブコウジ(ヤブコウジ科)は「十両」、アリドウシ(アカネ科)「一両」と呼ばれます。いずれも秋から冬に、赤い丸い実をつける常緑低木です。実の付き方が一番多いのが「万両」ですが、下向きに付くので、上向きのセンリョウのほうが見栄えが良いように思います。
葉は互生で、楕円形で先はとがり、縁には特有の丸い鋸歯があります。この丸い縁のでこぼこを見ただけでマンリョウと分かります。(左図)
ヤブコウジ属だけあって実も花もヤブコウジに良く似ています。ヤブコウジの実はせいぜい2〜3個しかできないですが。実の大きさは、若干ヤブコウジの実の方が大きいです。マンリョウやヤブコウジの実は核果と言って、内果被が硬くなって核というものを作ります。その核の中に本当の種子があります。分かりやすく言うと梅干の種のような物が核です。その中にある仁が本当の種子です。右図の下の段は、それぞれの核で、白くて外側に筋の用な物があります。
アラカシ ブナ科の常緑高木 第57回
本州(宮城県、石川県以西)・四国・九州・沖縄、朝鮮からアジア東南部に分布し、比較的暖かい土地に生育する高木で、樹高は約20mにもなります。
島熊山にあるいわゆるドングリの木には、コナラ、アベマキ、アラカシがあります。コナラアベマキは落葉樹ですが、アラカシは常緑樹で、おそらくこのあたりの自然が何百年も人手が入らなくなった時に優先種となるような木です。自然状態では、なんら撹乱が加わらないと自然に植物相が変化し、やがて極相林と言う状態になり、それ以上変化しません。大阪辺りでは、シイやカシ等の照葉樹林の森になります。コナラやクヌギ等は、縄文時代には食用として積極的に植えられ、薪炭用として近代まで積極的に育てられた結果、現代の里山の主要樹種となったのですが、アラカシはそのような二次林にも良く育つ樹種で島熊山にもたくさんあるのでしょう。
葉は互生で、質厚く、表面には光沢があり、長さ5〜13cm、幅3〜5cmの長楕円形〜倒卵状長楕円形で、先は急にとがります。葉の上半部に大型の鋸歯があり、先はきゅうに尖ります。葉や枝の荒々しい感じからアラカシと名がついたとの事です。3月末〜4月はじめに新葉が一斉に展開し始めますが、その頃には、葉の表に毛がびっしりとあって、緑白色または紅色に光る新芽に驚きます。一箇所から6〜7この新芽が伸びている姿にドキッとします。雌雄異花で、4〜5月、新葉の展開と同時に花を咲かせます。雄花序は、長さ5〜10cmで若枝の付け根から出て長く垂れ下がります。雌花は、新枝の葉腋に3〜5個つき。柱頭はふつう3裂します。アラカシは、葉やドングリは良く見ていましたが、花にあまり気がついた事がなく写真がありませんでした。ドングリは、その年の秋11月〜12頃熟し、長さ1〜1.5cmの楕円形で、殻斗は輪状の筋が6〜7本あります。樹皮は滑らかで、コナラやアベマキの様な大きなゴツゴツがありません。
←アラカシのドングリ 先に3本に分かれた柱頭の痕が残る。
←アラカシの樹皮
イソノキ クロウメモドキ科の落葉低木 第56回
以前6月にコドラート調査をしていたころ、種名が分からない落葉樹があった。この木、何だろうね?と随分悩んだものだが、その後良く探すと、島熊山のあちらこちらにこの木がある事に気づいた。今までどうして気づかなかったのかと不思議になった。竹を切って明るくなったことによって生えてきたのかもしれない。これと言って特徴のない木で、花が咲いたら分かるかもなんて思っていたら、花は咲いているのかいないのか分からないような、殆ど開かない花だった。持っていた樹木図鑑を探して、他のメンバーと意見交換しながら、やっとイソノキにたどり着いた。
イソノキは、本州〜九州の日当たりの良い山野に生え、高さ4mほど。葉は、2枚ずつが互生するコクサギ型葉序で、質は薄く、縁には浅い鋸歯がある。長さ5cm程、幅3cm程の楕円形で先はとがる。葉脈は裏面に隆起すし、裏面脈状に毛がある。6月頃、葉腋から散形に花序を出して、直径3mmほどの淡緑色の花をつける。萼片は直立し、花弁は萼片より小さい。花はわずかに開くのみで、いったいこの花が虫にどうやってアピールするのか不思議でならないが、丸くて直径6〜7mm程の実をつけ、赤色から黒紫色に熟す。果実は8月ごろ熟すが、すぐになくなってしまうところを見ると野鳥に人気があるようだ。
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花6月 これで咲いている。 | 実 8月頃、赤から黒く熟す。 |
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ニワゼキショウ アヤメ科の1年草 北米原産の帰化植物 第55回
明治時代中期に観賞用として輸入されたものが野生化したとの事だが、別の説もある。葉がセキショウに似ていて、庭など芝生や草地に生えることからニワゼキショウと名づけられた。
島熊山では、豊島高校東側の草原や南草原で多く見られる。
花被片は6枚(花被片とは、ガクが花弁と同様に花弁状になって区別しにくくなっている植物で、ガクと花弁を合わせていう言葉)、花色は赤紫色と白があり、どちらも中心部は濃紫色で、さらに中心は黄色になっている。雄しべは3本。
島熊山にはニワゼキショウに良く似たオオニワゼキショウもある。オオニワゼキショウは草丈がニワゼキショウ(20cm)よりも高く30cmくらいあるのでオオニワゼキショウとなった。花は水色で、ニワゼキショウほど平開せず、ややすぼまっている。
↑左からニワゼキショウ赤花 白花、オオニワゼキショウ
↑花の下のふくらみが子房で、受精後ここが膨らんで実ができる。
←実はオオニワゼキショウの方が丸くて大きい。
←どちらも葉は細くて、幅は5mm以下、長さは5cmほど。両面裏のアヤメと同じ構造をしている。
群生するニワゼキショウの花は綺麗ですね。
サクラの仲間 バラ科サクラ属の落葉木 第54回
桜はバラ科サクラ属の植物で、サクラ属にはウメやモモ、アンズなども含まれ、約200種あります。その中でサクラ亜属に分類されるのが桜です。日本の山に自生する主な桜には、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラなどがあります。そして、これらの変種を合わせると、数十種以上が自生し、また、これらの種を基本に育種されている栽培品種は、600種類以上にもなります。全世界にある、花を楽しむサクラのほとんどは、日本産です。
サクラは
自家不和合性(同一固体の花粉で受粉しない)であることから、自然交雑によっていろいろな品種が誕生しました。ソメイヨシノは、江戸時代末に江戸染井村(東京都豊島区)の植木屋が、吉野桜として売り出したのが始まりといわれています。エドヒガン系の品種とオオシマザクラの交雑種です。全国に植栽されているソメイヨシノは、すべて挿し木や接木等によって増やされたもので、同じ遺伝子を持ったクローンです。咲く時期も気象条件が同じであれば、ほぼ同時に咲きます。
島熊山には道路沿いにソメイヨシノが何本かあります。これらは植えられた物なのでしょうね。それ以外に自生かどうかはっきりとは分かりませんが、野生種の桜があります。老人ホーム横の階段の東側に2本の桜があり、一本は咲く時期が少し遅かった様に思いますが、一昨年枯れてしまいました。美しい木肌だった事を記憶しています。
また尾根筋や林内のあちこちに、野生種の桜があります。ヤマザクラはソメイヨシノと違い葉の展開と同時に、花が咲き、新葉の色はやや赤みを帯び、桜餅を思わせます。花はやや大きくて直径3〜3.5cm、一箇所から2〜3個の花を出します。ヤマザクラに遅れる事2週間ほどでカスミザクラが咲くそうです。カスミザクラの花には花柄に毛があるのが特徴。冬芽には毛がなく芽鱗がぴったりとしています。4月、桜の季節です。島熊山の野生桜の観察してみるのもまた楽しいですね。
左;ヤマザクラの冬芽 と 右:カスミザクラ?の冬芽
アマヅル ブドウ科ブドウ属の落葉ツル性木 雌雄異株 第53回
秋も深まってきて、島熊山もハゼや桜の紅葉が美しい季節です。そんな時期に真っ赤に紅葉する三角形の葉を持つツル性の木があります。それはほんとに綺麗で、普段は全く気がつかないのですが、この時期にこそと、その存在を主張します。私は、ごく最近までそれがサンカクヅルだと思っていました。写真に撮って調べていたら、どうやらサンカクヅルではなく、アマヅルという植物だとわかったのです。
サンカクヅルとは、葉の光沢や、鋸歯の出方が違います。鋸歯の出方を左の図に示しました。葉は互生で長い柄があり、葉身は三角形で、先はとがり、ふちには鋸歯があります。若い葉は、時に浅く3つに切れ込む事があります(サンカクヅルでは切れ込まない)。葉に対生して出る巻きひげで、他の植物に巻きつきます。ブドウ属の植物の巻きひげは、2節は巻きひげが出て、1節は出ないを繰り返す特徴があります。「出る、出る、出ない」と覚えると良いですよ。このあたりでブドウ属と言うと、このアマヅルとエビヅルがありますので、一度確かめてみてください。
葉の質はやや厚く、両面に光沢があります(サンカクヅルでは光沢がない)。花はブドウの花に良く似て、葉腋から花序を出して、房状に多数の花をつけますが、雌雄異株との事で、雄株には実がなりません。まだアマヅルの実は見た事がありませんので是非見つけてみたいです。果実は甘くて食べられるそうですが、酸味も強く喉を刺激するとの事です。アマヅルの名の由来は、ツルから甘い汁が出るからだそうです。砂糖のない時代甘味料として利用されたそうです。
←アマヅルの葉
アマヅルの雄花 5-6月 アマヅルの紅葉 11-12月
マルバハギ マメ科の落葉低木 第52回
本州~九州の日当たりの良い山地に生える。高さは1.5mほどになる。島熊山では尾根道の入り口付近やクロマツ林にある。一般にハギと言われる物には、キハギ、ミヤギノハギ、ヤマハギ、マルバハギ、ツクシハギ等があり、庭木や花材として利用され改良されて色々な品種がある。ハギと言うとなんか皆似た感じでどう違うのかなと思い調べてみた。
キハギの花は、側弁は紅紫色ですが、旗弁や竜骨弁が白〜黄みを帯びる。小葉の先がとがり、葉柄は長さ1cm程ある。がくは4裂して先は尖る。
ミヤギノハギは、自然の分布では中部地方以北に分布するケハギから作られた園芸種で美しいので良く植栽されている。枝先は枝垂れ、小葉の先は尖る。葉柄は長くて2〜3cm程ある。葉腋から長い花序出して紅紫色の花をつけるので美しい。
ヤマハギは、小葉の先は丸いが、葉柄は長く1〜2cm程。花序は長くて5cm程。箕面ではヤマハギがみられる。枝は枝垂れない。
ツクシハギは、小葉の先は丸いもの〜凹むものまで、葉柄は長さ1cm程、花序は、葉よりも長く突き出る。
さて、島熊山の見られるマルバハギは、葉は3出複葉で小葉の先は丸く、または凹み、葉軸の先が針状に突き出すこともある(写真→)。葉柄が短くほとんどないのが特徴。葉腋から花序を出すが、花序が短く、葉より突き出ないという事が大きな特徴となっている。がく片は4つに分かれ、がく裂片は先端が細く伸びて針状となる (写真→) 。枝は枝垂れない。
14日、写真撮影のために訪れたマルバハギの花には、たくさんの蜂たちやルリシジミなどの蝶が来ていました。花の少ない島熊山の秋にあって貴重な蜜源になっているんですね。
マルバハギの花 | 雌しべや雄しべは竜骨弁の中に隠れている |
アカメガシワ トウダイグサ科の落葉木 第51回
アカメガシワは、新芽が赤い色をしていて、葉が大きく物を包む事ができるカシワの葉に似ていることから名がついた。この新芽が赤いのは、赤い毛が密集して生えているからで、毛をセロテープ等で剥がすと、その下の葉は普通に緑色との事だ。秋には、美しく黄葉し、全く赤味はない。アカメガシワの葉柄は、下の方の葉ほど長く、上に行くほど短くなり、どの葉にも良く光が当るように工夫されている。
竹林整備を始めてしばらくたったころ、西溜池の竹をほぼ伐採完了し、すっかり明るくなった地面からにょきにょきと生えてきたのは、アカメガシワであった。荒地や林縁などの明るいところに真っ先に生えてくる植物である。大木が倒れたり、山火事などで急に明るくなったところでは、アカメガシワのような成長が早く明るいところを好む植物が生えてくる。このような植物を先駆植物と呼ぶ。アカメガシワの種子の表面には油脂があり、休眠性が高く、そのままでは発芽率は低い。埋土種子となって長く地中で眠り、成長にふさわしい時がやってくるのをじっと待っているのだ。アカメガシワの種子は20年以上その発芽能力を有するそうだ。そして、35℃以上の温度差にさらされる様になると休眠が破られて発芽する。35℃以上の温度差とは、直射日光が当たるような環境でなければ、望めないのである。こうしてアカメガシワの種子は発芽の適期に発芽できるのである。実に巧みな戦略ではないか。
アカメガシワは、雌雄異株で雄株と雌株がある。6月下旬、枝先から花序を出して多数の花をつける。花びらはない。雄花は雄しべが多数球形に集まっている。雌花は雌しべの先が3つに分かれている。
また実もなかなか面白くて、秋には、実が割れて中から直径2mm程の黒い種子が現われる。実が割れた部分は、☆の様な形をしていて、これもまたおもしろく、何かに使えないかなと何時も思ってしまう。
スノキ ツツジ科スノキ属の落葉低木 第50回
島熊山を歩いていると、時々これはスノキだなと思う葉を見かける事があったが、そう言えば花が咲いている時に見た事がなかった。5月4日に易寿史氏よりスノキが咲いていると連絡を頂き、写真を撮りに行きました。可愛い釣鐘型の花が下向きに咲いていました。
スノキは、葉を食べると酸っぱい味がすることから「酢の木」です。もし見つけられるような事があれば、是非味わってみてください。
スノキの葉は互生で、葉柄はごく短く、葉身は長さ2.5〜3 cmほど、幅1.5〜2cm程の卵型で縁に細かい鋸歯があります。1年枝(去年の枝)が赤いところはネジキに似ています。
樹高は低くて、せいぜい1〜2mくらい、枝は横に広がります。秋の紅葉は美しいです。
花は、昨年の枝の先に緑白色の釣鐘型の花を1〜4個下向きにつけます。陽当りがいいと赤みを帯びます。花弁は、筒状で先が浅く5裂して反り返ります。下から覗いてみると、雄しべ10本が、雌しべに沿っています。このようなつぼ型で下向きに咲く花は主にハナバチが花粉を運ぶとの事。反り返った花びらが虫達にちょっとつかまる場所を作ってとまりやすくしているそうです。
果実は黒紫色に熟し、食べられます。果実の写真は持ち合わせがないので、次回是非チャレンジしてみたいです。
花 左:横から 右:下から見て
ナワシログミ グミ科の常緑低木 第48回
10月の清掃ハイキングの時、老人ホーム横の階段の右手にあるナワシログミが咲いていた。甘い香りを漂わせている。花が少なくなるこの時期に咲く貴重な花の一つだ。この時期咲く花は、とりわけ香りが良いような気がする。受粉の手助けしてくれる虫達を集めるため、精一杯の香りを放っている。
| 花 |
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ナワシログミは中部地方以西の本州〜九州の明るい林や林縁に生育する。4〜5月、苗代を作るころに実が赤く熟すことからナワシログミという名になった。根には放線菌が共生しており、空中チッ素の固定能力があるとの事。そう綺麗な花でもないのに植栽されているのはそのせいらしい。
花は、花弁がなく、花弁のように見えるのはがくで、筒状で、先は4裂する。雄しべは4本。
葉や枝、がくの外側にも星状毛がある。星状毛がびっしり生えている葉裏は、銀色でところどころに褐色の点が混じる。葉表の星状毛は、しばらくすると脱落してしまう事が多い。葉の縁は不規則に波打っている。
| 葉の表 |
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| 葉の表 |
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枝は長く伸びるシュートと、短い横枝とがあり、短い枝は、棘状に変化する。この棘を他の植物に引っ掛けてよりかかるややツル的な性格を持った木だ。(写真下)
| 右:シュート 左:枝が変化した棘 |
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果実は、やや縦長の楕円形で、赤く熟し、ぐみ特有のきゅっとした酸味がたまらない。
アベマキ ブナ科コナラ属の落葉高木 第47回
島熊山を代表する木であるにもかかわらず、まだ書いていなかったアベマキです。秋の実りの季節であるこの時期が一番ふさわしい季節ですね。
島熊山にはコナラの次に多い代表的などんぐりの木です。昔からコナラ、クヌギはなど薪炭材として、植栽されてきたので非常に多いわけですが、アベマキはどうなのでしょう?アベマキは樹皮にコルク層が発達する特徴があり、薪炭材や椎茸のホダギとしてはクヌギに劣っていますが、我々の地域の風土にはあっているせいか、クヌギよりも多く見られます。クヌギとの違いは、このコルク層の発達と、葉の裏の毛が密生し葉裏が白く見えるという特徴があります。とどちらも温暖で乾燥した環境に適応した結果です。
アベマキの樹皮 |
左:クヌギ 右:アベマキ |
ところでコルクはヨーロッパに産するコルクガシの樹皮を剥いた物です。ロバートフックが顕微鏡を使って見たのがコルクで、小さな小部屋をcellと名づけたのが細胞の起源です。アベマキのコルク層は本場のコルクガシほど発達しませんが、戦中はコルクの代用品として使われたとの事です。
花(雌雄同株:雄花と雌花が同じ株に咲く)は、4月末ごろ咲き、どんぐりは約1年半かかって成熟します。始めの1年は殆ど成長せず、直径が3mm程のままですが、翌春からグングン成長して9月にはもう十分な大きさとなっています。ところで同じどんぐりでもアラカシやコナラでは、春咲いた花にできた実が、その年の秋に成熟します。
↑アベマキの雄花 (4月14日) |
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↑矢印はどんぐりの赤ちゃん (11月) |
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↑若いどんぐり(6月) と 完熟どんぐり(9月) |
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アベマキのどんぐり (10月)
ぼうし(殻斗)は鱗片状で、どんぐりの先の周りが窪みます。
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1年成 | 2年成 |
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コナラ | クヌギ |
ミズナラ | アベマキ |
ナラガシワ | ウバメガシ |
カシワ | ウラジロガシ |
イチイガシ | アカガシ |
アラカシ | ツクバネガシ |
シラカシ | マテバシイ |
クリ | シルブカガシ |
ブナ | スダジイ |
イヌブナ | ツブラジイ |
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ヤマモモ ヤマモモ科の常緑高木 第46回
7月の始め道を歩いていたら、ヤマモモの実がたくさん落ちていました。そう言えばまだヤマモモを書いていなかったなと思い出しました。6月の清掃ハイクの頃、千里緑地周回道路際にたくさんのヤマモモがなっていて、真っ赤な実が熟れて道路に落ちている光景を毎年目にする。真っ赤に熟した実はそのまま食べても美味しいし、果実酒につけてもいいです。
ヤマモモは関東以西の温かいところに自生しますが、公園等にも良く植栽されています。葉は長楕円形で細長く、互生ですが枝先に集まります。成木の葉は全縁で鋸歯がない事が多いですが、若い個体では荒い鋸歯があります。
雌雄異株で、3月末〜4月初めころ枝先に花穂をつけます。風媒花なので花弁等はありません。
ヤマモモの雌花(4月11日)
| 雄花 (4月11日)
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| ←実は、6月中旬の赤黒く熟しますが、表面は粒粒で艶があり、中に核果が一個あります。核果というのは桃の種のようなもので、種子の周りを硬い殻が包んでいるものです。一つの花序から数個の実ができるようですね。
島熊山には大きなヤマモモの木が何本もありますね。株立ちする事も多く横に広く枝を張った姿はなかなか立派です。
ネットで調べたところ、「ヤマモモはハンノキ属植物と同様に放線菌と共生しており、空中窒素の固定能力がる。このような能力に注目され、山林火災跡地などの治山植栽に用いられる」との事。ヤマモモにそんな能力があったとは知りませんでした。
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ネズミモチとトウネズミモチ モクセイ科の常緑木
12月のモニタリング1000調査の時に、ネズミモチとトウネズミモチ(中国原産)の実の違いで、盛り上がった。葉の違いはよく知られているが、そう言えば実の違いをあまり考えた事がなかった気がする。
左:トウネズミモチ 右:ネズミモチ
葉はトウネズミモチの方がやや大きく葉の質も薄いので、葉を光に透かしてみると、側脈まで透けて見えるのがトウネズミモチ、主脈だけしか見えないのがネズミモチである。
実は、黒灰色楕円形で、この実の様子が鼠の糞に似ており、葉はモチノキに似ていることから、「ネズミモチ」という名になったと。モチとは言ってもモチノキ科ではなく、葉が対生(2枚の葉が同じところから向かい合わせにでる)のモクセイ科です。モチノキは互生でモチノキ科です。
左:ネズミモチの実と種 右:トウネズミモチの実と種
実のつきは、圧倒的にトウネズミモチの方が多く、1果序に100個以上の実がついていました。実は灰黒色で丸く、これに対し、ネズミモチでは実がやや大きく、より楕円で、実の数もぐっと少なく数十個ほどでした。実の中の種子をみると、ネズミモチでは、実に対して種子が随分大きい事が分かりました。
それにしても圧倒的なたくさんの実は、ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリなどの好物で、またレンジャクもこの実を求めて移動して行きます。あれほどたくさんあった実も、鳥たちの大襲来に、あっという間に、なくなってしまいました。そして葉には、鳥が落とした糞の痕がおびただしくついていました。
←ネズミモチの花は、5月の終わり頃から6月に咲き、白くて筒状、先は4裂し、雄しべは2本、雌しべ1本です。トウネズミモチは、少し遅れて6〜7月に咲きます。花序を上から見ると、見事な十字対生になっている事にちょっと感動します。花の作りは、同じですがなんと言ってもその圧倒的な花数は、木全体が白く見えるほどです。
ネズミモチの実 |
トウネズミモチの実 |
ヌルデ、ヤマウルシ、ヤマハゼ ウルシ科の落葉木
秋、里山を彩るのはウルシ科のヌルデ、ヤマウルシ、ヤマハゼ、の紅葉だ。そこで今回はその3種を観察してみた。まだ他の木々が緑の中で、一番早く紅葉して、ひときわ赤く美しいヤマハセの紅葉はよく目立つ。葉はいずれも奇数羽状複葉で、特徴は次の表のようになる。
ヌルデ
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ヤマウルシ
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ヤマハゼ
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小葉に鋸歯があり、葉軸に翼があるのが特徴。 |
小葉に鋸歯が見られる事があり、小葉の幅は、ヤマハゼよりやや広い。 |
小葉は細長く、先はしだいに細長く尖る。 |
いずれも雌雄異株で、花はヤマウルシ、ヤマハゼは5月中ごろ、緑色の花を、枝先に下向きに垂れるように多数総状につける。ヌルデは9月に白い花を枝先に上向きに多数総状につける。
写真左
ヤマウルシ雄花
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ヌルデ 左:雌花 と 右:雄花
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ウルシの果実は毛がたくさん生えている。やがて果皮が割れて種子が見えるようになる。種子は、白色で黒い縦縞がある。ヤマハゼの果実は、艶があり、ロウ物質を多く含んでいる。和蝋燭の原料であるハゼ蝋を採るハゼの木は、本来山谷に自生するヤマハゼとは別種のリュウキュウハゼである。ヤマハゼも、量は少ないが蝋物質が採れる。ヌルデの果実は塩味がして、野鳥が好んで食べる。11月には白い物質に覆われるようになる。この物質はリンゴ酸カルシウムという物質で、酸味と塩味がある。実際に食べてみると、塩辛い味がした。またヌルデの実を塩麩子(えんふし)といい、漢方薬として下痢、咳、痰止めの薬効がある。
↓ウルシ科の果実
漆を採るウルシは中国原産で、各地に植栽されている。ヤマウルシは山野に自生するウルシに近い植物で、樹液を傷つけると量、質ともに劣るが漆が採れる。またヌルデにつく虫こぶ「ヌルデミミフシ」は五倍子といわれ染料に利用され、ヤマハゼやウルシの材も染料として利用されるそうで、身近なウルシ科の木々は、意外に有用植物だったのである。
ヌルデはかぶれる事はほとんどないが。ヤマウルシ、ヤマハゼは注意!
↓ウルシ科の冬芽と葉痕
↑ヌルデは葉痕がU字型
コマツナギ マメ科コマツナギ属の落葉小低木
コマツナギは島熊山では、外周道路沿いの斜面に細々と残っている。日当りの良い乾いた環境が好みなので、森の中では難しく、林縁の斜面がその生育場所となっている。毎年厳しい草刈に遭うので、草丈は30〜50cmと大きくなる事はないが、十分伸びられる環境では、1m近くにはなるようだ。
コマツナギの名は、茎は細いが馬(駒)を繋ぐ事ができるほど丈夫な事から「駒繋ぎ」となった。草のように見えるが、これでも木なのである。そう言えば毎年刈りこまれるので、花が咲いた事は気がついても、果実ができた事を確認した事がなかった。花は7月〜9月ごろまで咲き結構花期は長い。もし刈り込まれていなければ9月でも楽しめる花なのだが・・今は跡形もなかった。それでも、毎年また花を見せてくれるのは、刈込にも強い、まさに草の様な木である。
葉は、互生で奇数羽状複葉、小葉は7〜13枚。小葉は夜にはネムノキのように眠るとの事。花穂は葉腋から穂状に立ち上がり、多数の花をつける。(写真上)花は下から上へと咲き上がって行き花穂の長さは5〜10cmくらい。コマツナギの花は、野辺の道を歩いていてほっと気持ちを和ませてくれるような可憐な花であり、大変好きな花だ。
今年8月15日、周回道路をコマツナギを探して歩いていたら、丁度ツバメシジミが吸蜜中に出会った。葉を良く見ると、どうやら虫こぶのような物が多数あった。何という虫こぶだろうと調べてみたが、図鑑にもネット上でも見出せなかった。素人なのでそれ以上は分からないが、植物と昆虫との密接な関係にはまだまだ不思議が一杯である。(写真左)
オオバヤシャブシ と ヒメヤシャブシ カバノキ科の落葉木
ヤシャブシと言うと花粉症の元凶らしい。島熊山には、少年文化館駐車場の奥にオオバヤシャブシが何本かある。その球果は「松ぼっくり」等と同様に、自然素材の工作に良く使われている。私はこれを採りに、何度もオオバヤシャブシやヒメヤシャブシのある場所に通っている。
3月、ヤシャブシの花が咲く季節だ。目立つ雄花穂がぶら下がる。ここから花粉症のもとの花粉が飛んで行くと思うと、花粉症の方は通りたくないかもしれないですね。
島熊山には、クロマツ林の北の境界に一本ヒメヤシャブシもある。ヒメヤシャブシの球果は、大きさが小さくて、一つの果穂に3〜5個つくので球果があればすぐ分かる。オオバヤシャブシとヒメヤシャブシは、花のつき方が違うので、花の時期に是非観察してみたい。
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↑3月初旬、オオバヤシャブシの雄花穂が長く垂れ下がり、花が咲き始めた。雄花穂の先に雌花穂がつく。雄花の方が先に成熟し、後から雌花が咲く。雌花は咲くと暗赤色になってとても綺麗だ。 |
↑ヒメヤシャブシでは、元に近い方に雌花穂がつき、先の方に雄花穂がつく。ヤシャブシも同じも同様に、元に雌花穂、先に雄花穂となるのでこれで、オオバヤシャブシと見分けられる。 |
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昨年の雌花が球果になっているのも見つかる。オオバヤシャブシ(写真左)は1個の球果をつけた果穂が1〜2つ程ついている。 | ヒメヤシャブシ(写真右)は3〜5個の球果をつけた果穂が2つ程ついている。 |
ヤツデ ウコギ科の常緑低木
ヤツデの花は、11月末〜12月 虫もほとんど見かけなくなる寒い時期に咲き始める。何故、こんな時期に咲くのだろうか、それはそれなりの戦略がある。咲いている花が少ないので、それだけ競争相手も少ない。虫は少なくても、それを一手に集める事ができる。一体どんな虫が来ているのだろうか?主にアブハエの仲間だ。寒いこの時期でも結構活発に活動している。ヤツデの花は、アブ、ハエの舐める口に合わせて、蜜が平たい面に染み出るようになっていて、しかも特別糖度の高い蜜が出るのだそうだ。これは確かめていないが、次回は、是非ヤツデの蜜を舐めてみたい。 |
↑ハエが一杯 |
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花穂は、初め苞葉に包まれていますが、花穂が開くと落ちます。花は、球形の塊の散形花序が更に円錐花序を形成しています。散形花序の中心から周辺へと咲いて行きます。更に円錐花序の一番上の花穂から下へ、頂から腋へと咲いていく。このように長い期間にわたって花が咲き続ける。これは、昆虫の少ない時期に確実に受粉する工夫なんですね。
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↑花序が開く前 | 花が咲く順の図 |
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↑開いた花序 |
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また花は、初め雄しべが成熟し、花びらや雄しべが落ちてしまってからめしべが熟す、「雄性先熟」だ。大きなヤツデの花穂を観察していると、雄性期から雌性期への変化や、上から下へと咲いて行くようすが観察できる。花弁は5枚、雄しべは5本。めしべも5本だが、雄性期では閉じて一本に見える。 またヤツデの葉は、落葉樹が葉を落としてしまうと角度を変えて、陽が良く当たるように変化するとの事。ヤツデの生育には、冬の日照が大いに関係する。 | 左:雄性期、右:雌性期の花 |
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イノコズチ ヒユ科の多年草
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島熊山のミヤコグサの草原、いつも昼食を食べている林縁の入り口付近に、イノコズチが生えている。花は、何時咲いているか分からないほど地味な花です。これが案外虫に人気があります。昨年、アサギマダラがこの花で吸蜜しているのを見ました。今年も蝶や蜂たちが来ていました。意外に蜜が出ているのかな?花はどんな花なのだろうと疑問に思いました。
イノコズチには、ヒナタイノコヅチとヒカゲイノコヅチがありますが、ヒカゲに咲いているからヒカゲイノコヅチというわけではなく、全体に毛が少なく、葉の質も薄く、花穂の花付がややまばらなのが、ヒカゲイノコヅチとの事。ここのは、ヒカゲイノコズチらしい。
葉は対生、節には赤く膨らんだ虫こぶができやすく、これが猪の膝に似ている事から「猪子槌」の名がついたとの事。 |
茎から頂から花穂を3つに枝分かれした花序を立てています。この写真で、花が咲いている部分がどこか分かるのです。 花のアップ⇒
花弁は無く緑色のがくが5枚、雄しべ5本、めしべ1本
雄しべの花糸と花糸との間にある突起(仮雄しべ)と雌しべの元にある子房の間の蜜が溜まっている。(矢印の部分)
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ここで注目したのは、花の向きです。やや下を向いています。
←左の写真では、花穂の上の方の蕾は上を向いていて、次第に下向きになり、花が咲いている時はやや下向きになり(矢印上)、花後はぐっと下向きになって、かぎ爪のあるひっつき虫(矢印下)になる事が分かりました。このかぎ爪は、苞葉が変化したものだそうです。 また花のがくは花が終ると、閉じて果実を包みますので、そのまま緑の果実になります。
小さな目立たない花にも不思議が一杯隠れていて面白いなと思ったしだいです。 |
ノイバラとテリハノイバラ バラ科の落葉ツル性木
ササ刈りをしていて厄介なのは、サルトリイバラやノイバラの鋭い棘。脚に絡まったり、刈った草にからみ付いていたり、取り外すにも厄介だし、おまけに痛い。日当たりの良い笹薮に良く一緒に生えている。けれども花はまことに可愛い。山でこの白い花に出会うとなんとなくホッとするのではないか。やや季節はずれるけれど、今回は、島熊山にごく普通に見られるノイバラとテリハノイバラを比較してみた。
花期 は、ノイバラが一か月ほど
早く5月中旬、遅れて6月中旬、テリハノイバラが咲く。花はよく似て、どちらも枝先に白い花弁5枚、めしべ1、雄しべ多数の花を、数個から十数個集散につける。良く見ると違いが見つかった。雄しべの柄 (花糸) がノイバラは白く、テリハノイバラは黄色かった。花粉で黄色く染まっていたのかも。(HPで見てください)
葉は、どちらも奇数羽状複葉で小葉は7枚くらい。鋸歯がある。テリハノイバラは、葉に艶があるのが特徴で、名の由来になっている。葉の幅は、テリハノイバラのほうが、広く、大きさはやや小さい。全体丸い感じがする。また、ノイバラには、切れ込みの大きい托葉が目立つ。繊毛が生えている。写真⇒
実は良く似ているが、右の写真を見ると違いがちょっと見えてきたような気がする。皆さん違いを感じますか?
島熊山の周回道路から、6月半ばには、テリハノイバラの大きな株が木の上からぶら下がり、花の時期には見事な白い花のオブジェが出来上がる。その美しさにちょっとビックリした事がある。来年は、是非皆さん見て欲しいものです。
カマツカ バラ科の落葉低木
4月19日尾根筋のカマツカの花が早くも咲き始めていた。例年より早いような気がした。
尾根筋の東側、ロイヤルスクエアマンションが、丁度途切れるところにカマツカの木があり、毎年その花が咲くのを楽しみにしている。
白い花を丁度コデマリの様に、丸く固まってつける (散房花序) 。5月3日に行って見たらもう花は終わり掛けて居た。丸いスプーンのような形の花弁が5枚、雄しべ20本、めしべは3本が元の方で合着しているとの事。
新緑の頃の葉は柔らかくて、わずかに縁が赤みを帯びているので、すぐに分かる。葉は互生で、縁には細かい鋸歯があって、葉先は尖っている。真新しい、本年枝は、赤かった。また秋の紅葉も美しい。
秋にはバラ科らしい、ノイバラの実に似た赤い実をつける。実は食べられて甘酸っぱい味がするとの事、この秋には是非試してみたい。
カマツカの名は、枝が硬くて折れにくい事から、鎌の柄に使われた事による。別名の「ウシコロシ」は牛に鼻輪を付ける時に、この木で穴を開けたことに由来するとの事。
カマツカは、島熊山には意外にたくさんあり、花の時期には、白い花をたくさん付けて美しく目立つのですが、花が咲かないとあまり気がつきません。4月の下旬ごろ毎年花をつけるので、この頃探してみると、あちこちに見つける事ができるでしょう。
カマツカの葉 5月4日 | 実 10月25日 |
ヤブツバキ ツバキ科の常緑木 本州、九州、四国、沖縄、中国、朝鮮南部に分布。
ツバキは、花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られていましたが、特に近世に茶花として好まれ、多くの園芸品種が作られました。
日本に分布するツバキの原種にはヤブツバキとユキツバキがあり、ヤブツバキは、福井県より南側の西日本と、海岸沿いに分布し、ユキツバキ、新潟、山形県の山岳域に分布します。
両者の分布域が重なるところには、中間型のユキバタツバキがあります。
これらの原種からさまざまな園芸種が作られました。また18世紀には、イエズス会の助修士で植物学に造詣の深かったゲオルク・ジョセフ・カメルはフィリピンでこの花の種を入手してヨーロッパに紹介。その後有名なカール・フォン・リンネがこのカメルにちなんで、椿にカメルという名前をつけたそうです。
ツバキの花は、花びらが個々に散るのではなく、花弁とおしべが丸ごと落ちます。その様子が、首が落ちる様を連想させるために、入院のお見舞いに持っていく等は、タブーとされています。また、武士は、その様子が、切腹を連想させるという理由でツバキを嫌った、と聞いていました。しかし、それは幕末から明治時代以降の流言で、実際には江戸時代には大々的に品種改良が進められていたとの事です。
今回、ヤブツバキを書くにあたり、実際にヤブツバキの花を見て、分かった事は、ツバキの花弁は、元の方で合着していて、花弁一枚一枚がバラバラにならない、またおしべも筒状になって合着し、花弁と一体になっています。なので、がくとめしべを残し、花とおしべが、花の形のまんま ボトッと落ちる事になります (写真右)。良く似た山茶花は、花弁が一枚一枚バラバラになって散りますが、その理由が分かりました。 |
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花弁は通常5枚で、元が合着。おしべは50本ほどもあり、元は筒状になって合着し、花弁についている。めしべは、一本で、先は3裂する。(写真右)
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実は硬く、熟すと割れて中から黒褐色の種子が数個出てくる。この種子を絞って椿油が採れる(写真右)。
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葉はクチクラ層が発達、艶がり、互生し、縁には細かい鋸歯があります。(写真右)
島熊山では、周回道路沿いの林縁に大きなヤブツバキの木があり、今を盛りと赤い花をたくさん付け、またその下には美しい落ち椿がありました。
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イヌビワ クワ科の落葉木
イヌビワは、イチジクのような実がなる、雌雄異株の低木で、関東以西本州、四国、九州、沖縄に分布するとの事。比較的暖かいところに分布するようですね。林縁の比較的日当たりの良いところに育ちます。葉は、互生で、全縁、先は尖って、つけ根は、ちょっとハート型に切れ込みます。イチジクのように、茎や実を切ると白い乳液が出ます。
イヌビワの実はイチジクそっくりで、正しくは、花嚢または果嚢と言われます。実のように見えますが、中に花を入れた袋のようになっていて、この袋の中でイヌビワの花は、人知れず咲き、人知れず受粉し、人知れず果実を作っています。このような花のつき方の事を、陰頭花序と言います。花は花嚢の中に包まれているので、受粉には、それ専門のイヌビワコバチの助けを借ります。イヌビワとイヌビワコバチは共生関係にあります。冬の間、雄株には、花嚢がたくさんあって、その中でイヌビワコバチは冬をこします。春になって、若い雄木の花嚢から飛び出した、イヌビワコバチは、雄木の花嚢にもぐりこみ、産卵します。産卵された花嚢は、虫こぶになって、この虫こぶを食べて、イヌビワコバチの幼虫は育ち、初夏には、成虫となって交尾(♂はそのまま死んでしまうそうです)。♀は、雄木の花嚢から脱出、この時、花粉がイヌビワコバチの♀の体に付きます。雌木の花嚢へ入り込んだイヌビワコバチの♀によって、イヌビワの花は受粉完了。果実ができて果嚢となります。果実ができた実(果嚢)はジューシーで美味しくなり、野鳥などに食べられて、種子散布するしくみです。
皆さん良くご存じのイチジクも、実は花嚢を食べています。イチジクの受粉には、イチジクコバチが活躍するのですが、イチジクの実を食べて中に虫がいたらなんかちょっと気持ち悪いですよね。でも大丈夫、日本にあるイチジクは、雌の木だけで、雄の木がなくても実が付くように改良された物だけだそうですよ。ただし、実は熟すけれど、種子はできません。 なので、挿し木で増やします。
島熊山では、いつもお昼を食べるミヤコグサの草原の隅に1本生えています。これは雌株だそうです。秋、赤く色づいた実を割ってみると、中には、種(本当は果実)ができていて、ジューシー。食べるとほんのり甘くて美味しかった!
変わって、老人ホーム上の、尾根筋入り口を入ってすぐ右手には、雄株があります。8月に行って見たところ、お尻の部分は大きく穴が空いていました(写真左)。その後、見ると実は落ちてしまってありませんでした。雄の実は、中の花が咲くと、比較的早く落ちてしまうようです。雄株では、秋から冬に若い実ができます。
何時ごろ若い実(花嚢)ができているかを見ると、雄木と雌木が見分けられるようですね。何度読んでもややこしいイヌビワとイヌビワコバチの関係ですが、興味を持って観察してみたいものです。
黄葉し始めたイヌビワの葉 11月
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イヌビワの花嚢断面 白い乳液が出ている 11月 |
イヌビワコバチが脱出したイヌビワの果嚢 8月
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イヌビワの果嚢断面 2月
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シャシャンボ ツツジ科スノキ属の常緑木
島熊山の雑木林に白いシャシャンボの花が6月末に咲き始めた。白い釣鐘型の花がびっしりと咲いている。同じ白い釣鐘型の花なのに、ネジキほど美しいと感じないのはなぜかな?常緑だから、花の咲き時期が梅雨の真っただ中で気がつかないからかな?
シャシャンボは、花よりも実の美味しさで知られている。常緑のブルーベリーとも言われるその実は、実に甘い。一気にたくさん口に放り込んで、むしゃむしゃと食べても大丈夫なくらいたくさん実るのはありがたい。皮も種も気にならない。
葉は互生で細かい鋸歯がある。一見ヒサカキに良く似ているが、葉裏の主脈に沿って指でそっとなでてみると、ぷつぷつっと小さい物が指に当る。蜜腺だ。
木肌は古くなると剥けやすく、剥けると赤褐色で滑らかで特徴ある色になる。
葉の腋から5〜8cmくらいの花穂を出して、釣鐘型の花を多数付ける。一つ一つの花の下には、一枚ずつ包葉が付く。実になってもこの包葉は、残っているので、この点を確認すればヒサカキと間違うことは無い。
実は11月〜12月、直径5mmほどの丸い実が、黒く熟す。
名の由来は、「小小ん坊」(ササンボ)が訛ってシャシャンボとなったとか。小さな丸い果実を意味するとのこと。
島熊山では尾根筋の両側にあちこちで見られる。昨年、火事で焼けてしまったシャシャンボの株元から、新しい萌芽がたくさん出ているのは、まことに力強く、生命のたくましさを感じる。
モチツツジ ツツジ科の半落葉低木
島熊山の雑木林を代表する花の一つですね。尾根筋のここかしこに4月末から5月に掛けて咲いています。丁度コバノミツバツツジの花が終わるころに美しい花を咲かせます。山梨県・静岡県から岡山県までの本州と四国に分布するツツジ。アカマツ林などの明るい二次林に生育し、高さ数mになります。
名の由来は、花のもとが鳥もちのように粘る事から。がくや花柄には腺毛がびっしり生えていて、そこから分泌される粘液によって粘ります。ここに多くの昆虫が粘着してとらえられているのが観察されます。この腺毛は花にやってくる、花粉媒介に役立たない昆虫を捕らえ、花を昆虫に食害されるのをふせぐために発達したものだそうです。
葉にも毛が多く、春先に出る葉は大きく3〜6cm、夏以降に出る葉は小さくて2〜3cm。モチツツジの葉は秋に橙色〜赤黒紫色に紅葉します。春に出る大きな葉は、紅葉した後に落葉しますが、冬芽を取り巻く数枚の夏型の葉は落葉せずに、春を迎えるので、半落葉といわれます。花芽の鱗片には白長毛と腺毛がまざり、触ると粘ります。
また、10月から11月ごろ時々咲いているモチツツジの花を見る事が多いですね。返り咲きというのでしょうか。
↑腺毛に捕らえられた虫 2008年4月2日 |
↑モツツツジの花 2008年4月26日
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ザイフリボク バラ科の落葉低木
岩手県以西の本州、四国、九州に生育する。春、葉の展開と同時に白い花を咲かせる。花弁は細長く、采配(戦場で大将が手に持ち、士卒を指揮するために振った道具。厚紙を細長く切って作ったふさを木や竹の柄につけたもの。色は白・朱・金・銀など)の様であるとの意味から、采振り木の名前が付いた。シデザクラという別名もある。シデ(四手)とは、神社などで縄やサカキに白い和紙を切ったものを折ってぶら下げるものであり、これも白くて細長い花弁からのイメージで名が付いている。
若葉は、初め白毛が密生し柔らかくて優しい感じがするが、次第に毛が落ちて無毛となる。葉の縁には小さなきょ歯がある。果実は青紫色に熟し、食べられる。樹皮は細い縦縞の濃淡の灰白色で、滑らかで美しい。慣れてくると木肌を見ただけでも、見分けられるほど、特徴がある。樹高は、数mまで、幹もあまり太くはならない。
島熊山では、尾根筋の道を少し入ったところ、尾根道の左右に2〜3本ずつ生えている。
4月、コバノミツバツツジの花が終るころ咲く。白く細長い花弁は、特徴があり、この時期、是非見ておきたい花です。
2007年4月 花 | 11月 実 |
新葉は白っぽい | 美しい木肌 |
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クズ … マメ科のツル植物 … 〜冬芽と葉痕を見てみよう〜
クズは、日本各地に分布し、東〜東南アジアに広く分布するツル植物。秋の七草の一つ。8月のおわり頃から9月にかけて房状の花を咲かせます。古来日本では、クズの根からはでんぷんをとったり、そのツルは薪をくくるために利用されたりして、山の作業のなかで有効に利用されてきました。しかし現在このような利用がほとんどなくなり、木々を覆い光を遮断して、樹木の生育を妨げる元凶になっています。クズの成長は早く、盛夏では1日に1m程も伸びます。
また、種子から発芽して増える他に、地上を伸びる茎の所々から根を出し、株を広げます。不用意に刈り取ると、所々に残った株から再生し、かえって個体数を増やしてしまうことがあるそうです。毎年あれだけ刈り取っても、また次ぎの年には、また木々の樹幹をすっかり覆うほどに育ってしまうクズの繁殖力には恐るべきものがありますね。
このおおせいな繁殖力、裸地の緑化に役立てようとアメリカに移出され、当初、クズによる緑化は大成功し、飼料としても優秀であったこともあって重宝がられましたが、その後クズは大繁茂し、電線を切断したり、牧場の小屋を覆ってしまうなどの被害が出て、現在ではアメリカ東南部のジョージア州を中心に広がっており、駆除すべき害草に指定されています。生物の導入には細心の注意が必要ですね。
このように、すっかり悪者になってしまった、クズですが、多くの有用な働きもあります。
クズの根を乾燥させた物は、葛根(かっこん)といわれ、漢方薬「葛根湯」の主成分で解熱、下痢止めなどに効果が有ります。またクズの根から取れるでんぷんを精製乾燥させた葛粉は、和菓子の材料として有名ですね。10年以上の成熟した株からでないと、良い葛粉は、採れないそうです。
また、クズの新芽、若葉を摘み取り、熱湯で塩茹でして、あえもの、油いために。クズの花は、塩ゆでして酢のものや天ぷらにできます。
島熊山でも、活動のたびクズ刈りに汗を流していますね。今の時期、クズはすっかり葉をおとして、つるだけが木に絡まっていますが、葉のおちた跡(葉痕)を見てみると、そこにはいろんな表情の楽しい顔がありました。爺さん、小人、あなたはそこに誰の顔を思い浮かべますか?
クズ の 葉痕
ウメモドキ モチノキ科の落葉低木
秋から冬に掛けて 雑木林の中を歩くと真っ赤な見をつけた、小さな木が目に付いた。10月の森の手入のときだったか、土井さんが作業場から持ってこられた一枝には、びっしりと赤い実が付いていた。「ウメモドキだ!」こんなに真っ赤に実をたくさん付けて。嬉しくなった
ウメモドキは、湿原の周辺などの湿った場所に生育することが多いそうだ。雌雄異株で、花は、うすい透けるようなピンク色で、花びらは4枚、雌花には、雌しべ1と雄しべ4があり、雄花には、雌しべは,無く雄しべ4がある。(写真 左:雌花 右:雄花)
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雌花 | 雄花 |
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葉は互生で、特徴のある、先の尖った鋸歯が有り(写真 右)、裏の葉脈に毛が多い。
雌花は葉腋に3〜4輪、短い柄が有る。これが秋になって真っ赤に色づいた実になると赤い実が、まるで枝から直接出ている様に見える。(写真 最下)島熊山には、竹伐採作業をしている林内に何本か有るので、冬のこの時期、赤い実を目印に、探してみてはいかがか。 | 葉の特徴有る鋸歯 |
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雌花 葉腋から3輪咲いている。 |
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3個ずつ赤い実が並ぶ |
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チガヤ イネ科の多年草
チガヤはアジアの熱帯地方の広く分布するイネ科の草で、刈りこみに強く、草刈と共に繁栄する植物の典型だそうです。葉を形成する芽が地表面直下にあり、地上部を刈り取られると地下部に蓄えた栄養分を使ってすぐに葉を回復するとの事。島熊山の豊島高校東側の草原、や南側の草原で、昨年からチガヤの大草原が復活したのになるほどと改めて思いました。年数回の刈りこみがあるところでは、ススキよりチガヤが優勢になるそうです。市との申し合わせで、年2回の刈りこみを実施した事で見事なチガヤ草原が復活したわけです。
5月に白銀色の花穂をつけ、風になびいて光り輝く風景はすばらしく感動を呼びます。タンポポの咲く頃には、この地面近くでまだ葉鞘に包まれた若い花穂を、ちょうどチューイングガムのようなおやつ代わりに食べていたと井谷さんが以前話していたのを覚えていますが、ネットで検索すると、ほんのりと甘い味がして、良く食べたとの記述が多く見つかりました。同世代の方には懐かしい味なのでしょう。
チガヤの花穂は花が終わるとやがて種子に付いた毛が生長し、綿毛となり、夏には、ふわふわとチガヤの種子が飛んできます。
秋から冬にかけ、葉は紅葉して赤紫色を帯びます。
「我が君に 戯奴(わけ)は恋ふらし 賜(たば)りたる 茅花(つばな)を食(は)めど いや痩せに痩す」と万葉集に詠まれているほど、日本人には馴染み深い植物です。草原を渡る風に、チガヤの銀の穂の波を見て万葉人も感動したのでしょうか。
また、チガヤの根を乾燥させたものを、茅根(ぼうこん)と言い、カリウム塩によると思われる顕著な、利尿消炎作用があるそうです。
2006年5月の風景 草原を風が渡る
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チガヤの花穂 | 花のアップ おしべの紫色が目立つ |
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コバノミツバツツジ ツツジ科の落葉低木
コバノミツバツツジは、島熊山を代表する早春の木の花です。千里緑地の周回道路より南の尾根筋を歩くと、そこかしこ、ふわっとピンクの花が咲いて、山はすっかり春色になる。
高さ数mになる落葉低木で、長野県以西のアカマツ林など、明るい雑木林に生育する。ほぼ落葉し、早春、新葉の展開に先だって、紫から淡紅色の花を咲かせる。春の訪れを実感させるツツジである。1本のめしべの回りに10本のおしべがある。花粉は細い糸でつながっており、訪れる昆虫の体に付着しやすい構造となっています。
花が終わる、と明るい緑の葉が出てまた山は若草色に包まれる。
名前の由来は「小葉の三つ葉つつじ」の意味。茎の先から3枚の葉を出すミツバツツジの仲間にはたくさんの種類があるが、そのなかでも小さな葉を持つとの命名でしょう。
日本に自生するその他のミツバツツジ類には、トウゴクミツバツツジやサイコクミツバツツジ、コバノミツバツツジ、ダイセンミツバツツジ、ユキグニミツバツツジ、キヨスミミツバツツジなどがある。本家のミツバツツジは、コバノミツバツツジと違っておしべの数が5本しかないそうです。
3月11日の森の手入の時に、この春初めてコバノミツバツツジが咲いて居たそうです。
濃い紫の蕾が開くと、紫がかったピンクの花があちこちで見られそうです。
花のアップ | 2007年3月13日咲き始めたコバノミツバツツジ |
展開し始めた葉の様子
三枚の葉が枝先からでる | |
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フユノハナワラビ シダ植物(ハナヤスリ科)
日本全国に分布する、冬緑性のシダ植物。秋にカズノコ状の胞子葉を出して多数の胞子を飛ばします。冬の時期に青々としています。夏の時期には休眠して枯れていますが涼しくなる秋には 新芽を出します。胞子葉と栄養葉は、元の方で柄が合着し一本になっています。冬に胞子葉をもたげ、あたかも花のようであるというのが和名の由来です。
フユノハナワラビはシダ植物ですから、種子植物とは違って、地上部は葉で、茎は地下茎です。葉は胞子をつけるための葉(胞子葉)と、主に光合成をするための葉(栄養葉)があります。栄養葉は光沢が有り縁に細かい鋸歯が有ります。
明るい草地を好み、9〜10月頃から冬までの期間、十分に光合成ができるためには、草があまり生育していないか、刈り取られる場所である必要があるので、主な生育地は人里であり、ため池の堤防等のように、時折刈り取られるものの、人があまり踏みつけないような場所によく育ちます。島熊山では、老人ホーム横階段を登って、尾根筋の入り口、奈倉さんの池周辺の草地に、数株毎年成育しています。先日の早々俳句の時にも、草が伸びて日陰になった状態から、周辺の草刈りをして、フユノハナワラビに光を当てて、やる作業が行われました。今年は、17株確認されました。
よく似た仲間には、ナツノハナワラビが有り、これはフユノハナワラビとは逆に、夏に胞子葉を伸ばします。
下の葉が栄養葉 上に突き出ているのが胞子葉 | 胞子葉のアップ |
タンキリマメとトキリマメ(マメ科のツル性草本)
市立少年文化館駐車場奥の右手ヤブには、秋に可愛い赤い鞘と黒い種が目立つ、つる植物「タンキリマメ」がたくさん有る。リースなどの飾りにも向いている。
ツルは左巻きで、葉や茎には毛が多い。葉は3小葉からなり互生。葉腋から、花穂を出し、秋には、黄色い花を数個つける。秋には赤い鞘状の実ができる。これが割れると中から黒い種子が、2個鞘の両端についた形で、鞘が開き、赤と黒のコントラストがとてもきれいだ。
タンキリマメの名の由来は文字通り、種子を食べると痰をとめるという意味だが効能のほどは定かでないようだ。
良く似たトキリマメとの違いは小葉の形先が尖らず、最も幅が広いところが、葉の元よりも先のほう寄りに有る点だ。
トキリマメはタンキリマメよりも鞘の色が赤く綺麗だ。島熊山では、松林の起点のアベマキの木のすぐ近くに有る。トキリマメを島熊山で見つけたのは数年前で、この場所以外では、また見た事がない。他に見つけたら、是非教えてください。
タンキリマメと違い、小葉の先が尖り、小葉の最も幅の広いところが、小葉の元の方に近いところに有る。
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タンキリマメ葉 | タンキリマメ実11月 |
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トキリマメの葉9月 | タンキリマメの花9月 |
ヒヨドリジョウゴ(ナス科のつる性多年草) ヒヨドリジョウゴは、私が島熊山の雑木林を守る会に入ってから教えてもらい、初めて知った印象深い植物のひとつです。老人ホーム上の草原から、尾根筋の道まで行くと途中の、左手に良く茂っています。
林縁の明るいところに生え、木々のもたれかかるようにして、枝を伸ばすつる性植物です。つる性の植物は他の植につかまって、いち早く高いところに出て、光合成をするのですが、その捕まり方には、つる、巻きひげ、鉤爪、気根等植物によってさまざまな工夫があります。ところが、ヒヨドリジョウゴには、そのような、つかまるための特別な器官が何も有りません。茎や葉には全体長い毛があり、茎を伸ばして明るい上部に出ると枝分かれし葉を広げ、それで覆いかぶさるように他の植物につかまっていくのでしょうか。
葉は互生で、細長いハート型から3〜5裂に切れ込む朝顔形の葉まで、変化に富みます。
花は、普通葉腋から花茎を伸ばすものが多いが、ヒヨドリジョウゴは、葉と葉の間の節間から出ます。花は筒状花ですが、深く5裂し、反り返ります。良く探すと反り返る途中の花も見つかりますよ。おしべは黄色からオレンジ色で5本が、くっ付いてめしべを包みます。白い花びらから突き出たように見えるので、面白い形ですね。
果実は、緑色から朱紅色に熟し、艶がありまことに美しく、小さなほうずきのようです。美しい果実ですが、神経毒であるソラニンを含んでいるそうです。
名前の由来はヒヨドリが好んで食べることかららしいですが、食べているのを見た事はありますか?
有毒部位:全草、特に果実
有毒成分:ステロイド系のアルカロイド配糖体ソラニンを含有
中毒症状:頭痛、嘔吐、下痢、運動中枢、呼吸中枢麻痺により死亡する場合もあります
毒成分ソラニン:ジャガイモの青い部分、新芽の付近にも含まれます。は、煮沸することにより無毒になります。
また、トマトの葉に含まれるトマチンも同種の毒性を持ちます。
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葉と実 |
実 |
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ネジバナ(ラン科の多年草)
明るい草原に生える。別名「もじずり」とも言い、百人一首で「みちのくの 忍ぶもぢずり 誰ゆえに 乱れそめにし 我ならなくに」の句に出てくるもじずりはこの花のことらしい。
葉は根生葉(株元から出る葉)のみで数枚。根生葉の間から長さ15〜30cmくらいの花茎を出し、らせん状に花をつける。この時の螺旋の巻き方が右巻きと左巻き両方ある。自然界にあって、つるの巻き方は、右巻き左巻きは種によって決まっている。同じ種で右左両方巻くがあるネジバナは非常に興味深い。遺伝的に決まるのだとしたら、右巻きのネジバナに左巻きの花粉をつけてできるネジバナはどっち巻きになるのだろうか?誰か実験した人はいるのだろうか?調べてみたら、すばらしい研究をしている方が居た。上越市立中学校の3年生の生徒さんだった。県知事賞を受けた研究である。これはすごい。
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結論としてはネジバナの巻き方は遺伝的なものでは無いらしい。しかも、捻れのメカニズムは花の付き方と茎の捻れ両方の原因が組み合わさって起こるものらしい。この研究インターネットできる方は一読の価値があると思う。
そして私たちもルーペを持ってネジバナの観察をしようではないか。
島熊山では、ネジバナは、草原部分に見られるが、短い草丈の環境を好むので、草が伸びすぎた状態では少なく、今年は少し少ないようだ。
左:左巻き 右:右巻き
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花のアップ 1つ1つの花はランに似ている |
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ミヤコグサとセイヨウミヤコグサ(マメ科の多年草) 島熊山の豊島高校東側の草原には、10年ほど前は、真っ黄色に染まるほどミヤコグサの大群落がありました。みんな「綺麗ねっ」と感動したものだでした。それがいつの間にか少なくなって、草刈をしてミヤコグサを復活させようと考えているのは皆さん良くご存知のところですね。
あのミヤコグサ、実はセイヨウミヤコグサです。でもまあミヤコグサで良いじゃないか、と呼び名はそのままにしていました。
その後、私は本物のミヤコグサがあるところを見つけました。西町公園にそれはありました。そして最近、千里緑丘のすぐ西側の空き地にまた見つけました。ミヤコグサは、花数が少なく2〜3個ぐらいしかつかない。セイヨウは6〜7個ぐらいつく。見た目はセイヨウの方が豪華で綺麗です。どっちが綺麗といわれれば断然セイヨウです。
ミヤコグサ | セイヨウミヤコグサ |
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花数 | 2個が多い、片側につく | 7個まで普通6個ぐらい輪になる |
がく | 毛がなくてつるつる | がくに毛がある。 |
つぼみの色 | 黄色 | 赤色を帯びる事がある |
こんな違いがあります。ところが、このセイヨウミヤコグサも調べてみると他にも色々似た種があるらしいのです。ネビキノミヤコグサというのと、ワタリミヤコグサという新顔が有るそうです。
ヤマナラシ(ヤナギ科)
ヤマナラシは林縁の明るいところに生える柳の仲間の木です。毎年5月ごろになるとどこからともなく綿毛が飛んでくる事がありますが、これはヤマナラシの実の綿毛かも。雌雄異株で、雄の木と雌の木があり、早春の、3月ごろ、葉の展開前に、長く垂れた雄花穂と雌花穂を垂らします。
高さは10〜25mになり、成長が早いけれども木の寿命も短いようです。
葉は、互生でポプラの葉に似た形です。葉裏はやや粉白で、縁には細かい鋸歯があります。葉柄に特徴があり、普通の葉の葉柄は横に扁平なものが多いですが、ヤマナラシなどヤナギの仲間の葉柄は長くて、縦に扁平で、そのため風が吹くとよく揺れます。それで風が吹くと葉がパタパタとたなびいて音を出す。これが「山鳴らし」という名になったとのこと。
春3月、島熊山の林縁や、老人ホーム横の階段横に長い雄花穂を垂らしているヤマナラシが目立ちます。
雄花(06年3月11日) | 雌花(06年3月11日) |
綿毛(03年4月28日) | |
ネジキ(冬の姿)
ネジキはその名の通り、ねじれた木です。木肌を良く見ると縦の状線が目立ちます。この線を下から上へたどって行くと、不思議な事に次第に裏側へ回りこんでしまいます。そのためこの木の名がネジキとなったそうですが、なるほど納得の木です。高さは5m位になります。幹はあまり太くならず、木肌は縦の状線が目立つ灰褐色です。
花(写真は2003年5月23日)は毎年5〜6月ごろ、白い釣鐘状の長さ7mm位、径3mm位の花を、たくさんつけます。この花が散ると米粒を撒いたような感じがします。白くて清楚で大好きな花です。
葉は互生で、全縁(葉の縁のギザギザが無い)、花が無い時はナツハゼとよく似た感じですが葉を触って見るとナツハゼはごわごわの毛が生えていますがネジキにはありません。
冬にこの木を見ると、1年枝(その年の春から延びた新しい枝)が赤く艶々しています。よく見るとその前の年に延びた部分、そのまた前の年に延びた部分と色が違っているのが分かります。花が無い冬の時期も、そのはっとするほど赤い枝と冬芽で楽しませてくれます。
島熊山にはごく普通に見られ、尾根筋を歩けば、何本も見つけられます。葉の無い今の時期、ネジキの枝や木肌を手がかりに、ネジキ探しをしてみるのもまた面白いかも?
ネジキの幹:縦縞が裏側へ回り込む | ネジキの枝 |
ネジキの木肌 | ネジキの冬芽 |
フユイチゴ
山に普通に見られるキイチゴの仲間。常緑のツル性の小低木。地を這うように広がり、ほふく枝を伸ばして、横に伸び、またそこで根を出して広がっていく。葉は単葉で互生。長さ5〜10cmで柄があり、やや縦長の丸いハート形。縁は浅く3〜5裂に切れ込み、 細かい鋸歯がある。茎や葉脈に毛が多いが、いわゆる棘はない。
秋に白い花を枝先に数個集まってつける。12月には真っ赤な小さな苺のような実を付ける。大変美味で甘い。
島熊山では、南側草原の、林縁に広がっている。今丁度赤く熟しているので少し味わってみてはどうか。
南側草原の草刈をした時にフユイチゴの群落が見つかった。日当たりが良くなり元気に美味しそうな実をつけた。(半日陰くらい方が生育には良さそうとの事) |
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フユイチゴの花 ちょっとろう細工のような透明感がある花 2005年8月2日撮影 | フユイチゴの実 直径1,5cmくらいの球形 2005年11月18日撮影 |
ナンバンギセル
初めてこの花を見たのは島熊山の雑木林を守る会に入ってしばらく経ってからのことだ。寄生植物だと聞いて不思議な形の花にも何となく納得した気がした。
葉はないというか退化した小さな葉がある。地下茎の部分で鱗片状の葉で、地上からは見えない。地上に出る部分はは花茎と花だけだ。
赤紫というか濃いピンクというか、文字通り南蛮のキセル(マドロスパイプ)のような形の花を花茎の先に1つ付ける。花は筒状で先が上下2唇にやや分かれる。雌しべは1つで黄色い毛が多数はえている。がくが花の元を包む様に1つ付いている。花が終わると粉のように細かい種ががくに包まれたままできる。
ススキやサトウキビなどのイネ科植物の根に寄生して養分を取るので葉緑体が無く、透けるような色合いだ。
万葉集に出てきる「思い草」とはこのクサのことだそうである。それに比べ、和名のナンバンギセルは随分新しい名と言うことになりますね。
島熊山では、毎年9月頃から10月頃まで、南側草原の林縁のススキやチガヤのところから、又階段を上がった上の左のススキの中で花を咲かせる。
ハマウツボ科の1年草
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花のアップ奥に黄色い雌しべがのぞく |
ナツフジ
和名は、夏に咲く白いフジのような花の意。
7月〜8月に細長く垂れ下がる長さ20cmほどの花穂を葉腋から出し、白い蝶型の花を多数付ける。幹はフジ程太くならず、細くて、高さも3m程度。当年生の茎は直径2mmほどで、ほとんどは冬に枯れてしまう。生き残ったツルは5mm程度の太さになる。山路の道端や低木林などによく見られる。葉は長さ10-20cmで、奇数羽状複葉。フジの葉に比べやや小さく縁が波打つ。毛はほとんど無い。つるは右巻き。実は細長い鞘型で表面に毛が無い。この点でもフジと区別が出来る。
花は、花穂の元の方から順に咲き先のほうへと咲いて行くが、先が咲くころには元はもう枯れてしまっている。花も意外にすぐ落ちてしまい実付きは悪いような気がする。
夏に咲くので、ドヨウフジ(土用藤)の異名もあるとの事。
島熊山では林縁の通路からも良く見る事が出来、ごく普通に見られる。
マメ科の落葉性のツル性木
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ナツハゼ
山に生える、高さ1〜2m。の落葉木。 初夏、釣り鐘状の可愛い花を下向きに付ける。先は5裂し、色は赤と白っぽい花がある。雄しべ10本、雌しべ1本。果実はブルーベリーに似て大変美味しい。 葉は互生で、鋸歯は無く、粗い毛があり、触るとごわごわした感じがする。 島熊山では尾根筋のあちこちに点在する。良く似たネジキの葉はごう毛がないので、さわってみると違いが良くわかる。
ツツジ科の落葉木 |
ミツバアケビ
春4月始め頃に葉の脇から花茎を出し、暗紫色の花を房状につける。雌雄異花で同じ木に雄花と雌花が咲く。写真は先のほうに房状についている小さい花が雄花、もとの方にある大きな花が雌花。葉は名の通り三つ葉、つまり3出複葉で、互生、5小葉のアケビとは簡単に区別がつく。つる性落葉木で、つるは左巻き。秋には、アケビにそっくりの実がなる。種の周りの綿のような白い果肉が薄甘く美味しい。島熊山には尾根筋等でごく普通に見られる。
良く似たアケビはなぜか島熊山には少ない。アケビの花は、色が淡いピンクで花の大きさもミツバアケビより一回り大きい。熟したアケビの実は縦に割れ中から実が見える。「開け実」から転じて「アケビ」になったと言われている。実はなかなか生らない上に、実が熟して開くと、たちまち鳥が見つけて中身を食べてしまうので、人間はなかなか自然のおこぼれにあずかれない。
アケビ科のツル性落葉木
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ロゼット
今の時期、島熊山で咲く花と言うとハンノキとヒサカキぐらいしか思いつかなくて何にしようか迷いました。そこでロゼットについてお話します。
冬の寒い時期の多年草の葉が地面にへばりつくように広がっているのを見た事が有りますか?これをロゼットと言います。ロゼットは冬の寒さをしのぐ植物の工夫した姿です。立ち上がる茎は無く、地下茎から葉が放射状に拡がって地面にへばりついています。 冬の少ない陽光を一杯受けるためでしょうか。強い北風に吹かれないようにへばりついているのでしょうか。地面からの地熱を出来るだけ受取るためでしょうか。 春、茎が伸びてきたときの姿とは随分違うものが多いので、ロゼットを観察し、その後継続して何になるか調べて見ると面白いですね。葉の形が随分違うものも有ります。私もあまり分かりません。 ロゼットの名はその姿がバラの花に似ているからとの事です。
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猿も獲られるイバラという意味の名。鋭い逆さ棘が有り、不注意にさわると怪我をする。雌雄異株で、春に淡緑色の小さなユリそっくりの花をつける。葉は、互生で、丸い形だが先は鋭く尖る。葉の元にはたく葉が有り、たく葉の先は巻きひげになっていて、物にからみつく。またその鋭い逆さ棘で物に引っかかって上へ伸びる。秋には雌株に径1cmくらいの大きいまん丸い実が球形に集まって十数個つき、赤く熟す。
別名、山帰来(サンキライ)とも言い、木の葉で餅を包む事もある。サンキライ餅の名は聞いた事がありますね。
島熊山には、あちこちに有りますが、なかなか実が成っているものは少ないですね。雌雄異株なので雌株にしか実はならないことと、なかなか結実もしないのでしょうか?
大きな赤い実は、リースなどの材料にピッタリですが、その棘には気をつけて!
ユリ科のツル性落葉木
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雄花 |
林縁の明るい山野に生える。高さ5m位になる。葉は互生で毛があり、奇数羽状複葉。葉軸には翼が残る。見かけの葉のぶつぶつした印象とは違い、ウルシ科の中では、かぶれる危険の少ない種。雌雄異株で、秋、枝先の円錐花序を出し、白色の小さな花を多数付ける。林縁の木の頂きにこの白い花の塊が見えると意外に美しいのに感心する。蜜や花粉を求めて虫たちもよく集まってくるようだ。がく5、花弁5、おばなにはおしべ5、雌花には雌しべ1。
また五倍子(ゴバイシ)と呼ばれる虫こぶがよくできる。アブラムシの一種が作る虫こぶで薬効が有る。五倍子に多く含まれるタンニン酸の化学作用を使って、インキや染料が現在でも作られているそうだ。染料としては、空五倍子色(うつふしいろ)という伝統の色を生み出してきた。女性の「おはぐろ」して使われたこともあるという。また生薬として使われ、収斂(しゅうれん)作用、止血作用、抗菌作用などがあるそうだ。
島熊山では、少年文化館駐車場奥でよく観察できるが、周回道路沿いなどあちこちでみられる。
ウルシ科の落葉木
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夏、枝先に白い花を多数総状に付ける。花は筒状で先は5裂し、雄しべは10本。木肌は樹皮が剥がれやすく、なめらかになる。
葉は柄があり、互生で枝先に集まって付く。鋸歯があり、やや質薄く、細長い葉である。
島熊山では、数はあまり多くないが、北側の竹伐採をしているところの入り口近くに数本ある。
今年は、なぜかほとんど花が咲かなかった。(写真は2003年の物)
リョウブ科の落葉木
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山野に生えるつる性の植物。島熊山ではごく普通に見られる。林縁の木にからまっている。 6月頃、葉腋に2輪ずつ、白い面白い形の花をつける。花は筒状で5深裂するが、そのうち4裂片が合着している。花は開花から日数が経つと黄色くなるので、白い花と黄色い花が付き金銀花などとも呼ばれる。 葉は対生で、茎は右巻。春先に出る新葉は、菊葉といって縁が深く波打つ様に切れ込む。 スイカズラ科のツル性常緑木
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右上から:お花赤色タイプ、左上:お花白、右下:め花赤、左下:め花白 例年2月後半にはもう咲き始めることが多い。 早春、山に入るとどこからともなく生臭い香りがしてくる。え?ガス漏れ?と思いたくなるような香り。ヒサカキの花の香りだ。ヒサカキは雌雄異株。雄の木、雌の木、それに両性花が咲くものがあるそうだ。写真から雌花は花びらが開いているが雄花は花びらが釣鐘型なのが分かる。 葉は互生で鋸歯が有る。ツバキの様に光沢のある厚めの葉で、長さ3〜4cm、幅2cmくらい。榊の代わりに使われる事も多い。 色は赤色タイプと白色タイプが有る。
ツバキ科の常緑樹
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林床に生える常緑の小さな木。 地下茎をひき高さ10〜20cmで直立する。 葉は革質で互生、柄があり、鋸歯がある。 夏に葉腋から花茎を出し、ピンク色の花を下向きにつける。がく、花弁、共に5裂し、おしべ5、雌しべ1。 果実は、球形で赤熟する。別名十両(じゅうりょう)ともいう。(千両、万両に対して) 島熊山では、竹伐採地の奥の方のくぼ地の東側にある。また旧婦人会館奥にもある。実は良く知られているが、花は大変可愛いので、6月頃是非探して見て下さい。地面に這いつくばるようにして、こびとになった気分で良いですよ。
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